それどころじゃないか
2016年10月26日 07:30
五輪
冒頭の「五輪賞金制」は9月末、日経BPネットのコラムに掲載されたので、興味のある方は是非読んでほしい。かなり乱暴にまとめると、オリンピックはすでにプロ中心の祭典であり、潤沢なスポンサーマネーに恵まれている国際オリンピック委員会(IOC)がプロ選手をタダで使うのはいかがなものだろうか、ギャラというより、せめてメダリストには賞金を…という内容。
なるほど、ビジネス的に考えるならば正論だ。今さら「名誉」だけで人が動く時代でもないし。小林教授が提言している賞金額は金メダルで2000万円。IOCの財政規模からみても十分可能な数字だとか。これなら男子ゴルフのトップ選手も出場になびくかもしれない。
いや、しかし。
確かに名誉だけでは誰も生活できない。ましてやアスリートたるもの、練習にも試合出場にもお金がかかる。
だが今の時代、名誉は換金が可能だ。各種報奨金はもちろん、五輪での好成績をセールスポイントに独自スポンサー獲得の可能性もある。たとえばかつてのカール・ルイス、現在ならウサイン・ボルトにマイケル・フェルプス。日本でいえば高橋尚子や北島康介。彼らは五輪において1ドルたりとも稼いでないが、大舞台での実績を基にした収入を得ている。事実上のプロだ。
当然ながらテニスやゴルフ、バスケットボールやサッカーなどのトップ選手ならば、五輪とは関係なくそれなりに収入がある。確固たるプロリーグがない競技でも最近は賞金大会が増えており、中には同世代の社会人より稼いでいる選手も実在する。そんな彼らに賞金を、というのは理論として齟齬(そご)があるような気がする。
一方で競技生活を続けるため自腹を切り続ける一流アスリートも相変わらず数多い。むしろ賞金を与えるべきなのは彼ら、彼女らではないか?ただし、どこで線引きするのかは実に難しいが。
小林教授との飲み会ではビールやらチューハイやらをがぶがぶ飲みながら口角泡を飛ばし意見をぶつけ合った。「五輪賞金制」、まだまだ議論の余地がある。
偶然にもその翌週、IOCのバッハ会長が来日した。これは絶好のチャンス。ぜひとも小林教授を交え、賞金制へのご意見をドイツビールでも飲みながら聞いてみたかったけど、どうも別件が忙しかったようで。(専門委員)
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