水球界担う「小さな巨人」荒井陸が魅せる反骨心、20年五輪メダル「チャンスある」
2018年08月28日 10:00
水球
「水の中なんですけど地面を蹴る感じで飛び上がります。地上にいるよりも全然、楽。何時間でも浮かんでいられます」
――えっ、凄い。練習はハードですか?
「メチャクチャします。代表の合宿では午前と午後に3時間ずつ練習して後はウエートトレを2時間くらい」
――アジア大会の代表チームの仕上がりはどうですか?
「48年ぶりの優勝がかかっていますし負けられない。4年前はカザフスタンに決勝戦で敗れてますしね。カザフはロシア、セルビアなど水球が強い国の選手が国籍取得して代表になっている。アジアというより欧州のチームと戦ってる感じです」
――なぜ水球を始めたんですか?
「兄がやっていて、こんな難しいスポーツがあるのかと思った。水中では足がつかない。ボールは片手でしか触れない。泳げないとダメ。反骨心もあって興味を持った」
――難しいものを克服するのがモチベーションなんですね。東京五輪のメダルにも期待がかかりますね?
「リオ五輪は出場するのが目標で32年ぶりにそれがかなった。今は世界が日本の水球を注目してる。マークはされますけどメダルを獲るチャンスはあると思ってます」
――大きな選手との対戦は怖くない?
「ハンガリーは身長が2メートル以上あったりする。1メートル90だと小さい方ですね。ぼくは小学校から背たけの順番が一番前。自分より大きい選手しか周りにいなかったのでやることは変わらない。ガツガツ行ってイライラさせる。常に相手の死角に入るようにしている。横の動きも多くしています」
――相手がイライラして嫌なことをされたことは?
「水面下で海パンを握られて泳ぐのを止められたりしますね。審判に見えないところで首をガッと持たれると動けなくなる」
――相手に文句を言われたりする?
「ありますね。でも言葉が分からないので、何を言われても分からない。海外の選手は水中で蹴ったりするのが当たり前。でも、ぼくらは反則に慣れてないので蹴ろうとしても相手に当たらない。やっても仕方ないのでやらないです(笑い)」
――日本はフェアプレー精神ですもんね。パスラインディフェンスというカウンター攻撃が強み?
「ラリーを続けて体力を削る。後半きついですけど相手はもっときつくなる。こちらが攻めると、相手は攻撃できなくなる」
――スピードを生かすんですね
「そのために日本代表はスイムの練習をする。合宿では3時間で1万メートル泳ぎます」
――えっ…1万メートル。走るのだって無理ですよ。よく分からない世界です(笑い)。
「“全員が4クオーター戦える体力をつくれ”というのが監督の指示。前の晩に練習メニューを見ると“はあ〜”ってため息が出ます(笑い)」
――昨年までハンガリーのプロチームに所属。現地の印象は?
「素敵な国でとにかく親切。電車でも席を譲ったり日本人の感覚に近い。伝統料理のカツレツがおいしいです」
――1人の時間はどう過ごしていた?
「町ブラが好きでカフェ巡り。誰かがハンガリーに来たときに紹介できるじゃないですか。ハンガリー語の勉強にもなりますしね」
――ハハハ、真面目ですね。リフレッシュできましたか。
「楽しいですね。カフェに行く前に話すことを練習する。店員さんも分かってくれようとするので意外と通じたりするんですよ」
――やっぱり計画的(笑い)。お酒は飲まないんですか?
「飲めないんですよ。皆で集まってもぼくだけジンジャーエール。“とりあえず生”って一度言ってみたいっす(笑い)」
――芸能人では誰のファンですか。
「ももいろクローバーZ。ライブは全部行きたいです」
――どういったところが魅力ですか?
「同世代で何万人もの観客を集める。エンターテインメントが大好きで、人に影響を与える人は凄いと思ってます。7月も“うたのFNS夏まつり”に行きました」
――えっ?私、司会してましたよ。あの会場に?それは衝撃です(笑い)。
「整理番号9番。一番前でテレビに映るのもどうかと思って2列目にいました。倍率は高かったと思うんですけど応募したらたまたま当たった」
――あの20、30人のお客さんの中にいたんですか。声をかけてくれたら良かったのに。
「もうすぐ加藤さんと対談取材だな、と思いつつ恥ずかしくて無理でした。急に声をかけて、会場からつまみだされたりするのも嫌じゃないですか。なので1人で盛り上がってました(笑い)」
◆荒井 陸(あらい・あつし)1994年(平6)2月3日生まれ、神奈川県川崎市出身の24歳。兄の影響で小3から水球を始める。秀明英光高から日体大に進み、2014年のアジア大会では2位。16年にリオデジャネイロ五輪に出場する。ポジションはサイドでボールを運ぶ「ドライバー」。1メートル68。
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