ジョセフ流意識改革!高いタックルで攻撃を寸断せよ
2019年08月01日 05:30
ラグビー
「日本人は外国人に比べて体が小さい。低くタックルに入れと言われてきた。でも、それだけでは世界では通用しない。ボールに行くパワータックルが必要。ジェイミーがメンタルを変えてくれた」
腰から上、時に胸元に、強く当たる「高いタックル」が、ジョセフ・ジャパンの基本スタイルだ。6、7月の宮崎合宿では、より深く技術を掘り下げた。13人制ラグビーの元ニュージーランド代表、デビッド・キッドウェル氏(42)を臨時コーチとして招へい。相手を倒し切る、ボールを押さえ込むタックルが求められる13人制の手法を叩き込まれた。
フランカー徳永祥尭(よしたか、27=東芝)は「まず強く当たる。その後に、ボールを持つ手の肘を取る。肘を狙うことで、ボールをつながれない」と説明した後、見本を見せてくれた。
左肩で胸付近に軽く当たられた。すぐに左手が伸びてきた。ボールを持っていると仮定した右手を、脇が締まるように押さえ込まれた。脇を締められると、手の自由が利かない。パスはできない。強く当たって、肘を狙う。オフロードパス封じのタックルだった。
日本のタックルと言えば、膝から下に刺さる「低さ」がウリだった。高く当たれば力負けするが、足元に入れば大柄な選手でも倒せる。現役時代のジョセフHCも嫌がった、世界に誇る“小よく大を制す”伝統の武器だ。
しかし、近年は、タックルを受けながらつなぐ「オフロードパス」が世界に浸透。最短距離を突破するため、通ればチャンスやトライに直結する。低いタックルは上半身ががら空きになり、ボールをつながれるため、日本はこのパスを止めることが苦手だった。 15年W杯で1次リーグ敗退の日本は、1試合平均9回のオフロードパスを許した。8強で日本より多かったのは、アルゼンチンのみで同10・2回。優勝したニュージーランドは同4回しか許さなかった。数字上は、オフロードパスをされにくいチームが勝ち残った。
7月27日のフィジー戦。世界一のオフロードパス巧者の武器を5回に抑え、34―21で勝利した。“肘殺しタックル”の場面は少なかったとはいえ、もう一つの「オフロードパス封じ」が目立った。2人がかりで止める「ダブルタックル」だ。
1人目が高く当たって勢いを止め、瞬時に2人目がボールに絡む。この形で、5度もミスを誘った。守備担当のスコット・ハンセン・コーチ(43=ニュージーランド)は「接点は満足している」と及第点。ジョセフHCの4年間の取り組みが一つの成果になった。
もちろん、低いタックルは懐刀として忍ばせている。選手が状況によって「高低」を使い分けられるのが、19年の特徴だ。3日は、花園ラグビー場でトンガ戦。巨体ぞろいの突進を止められれば、W杯へ自信が深まる。
【相手にぶつかる瞬間大きなパワー加える】タックルの合言葉は「セイム・ショルダー、セイム・レッグ」だ。相手にぶつかる瞬間、肩と足の向きをそろえることで、大きな力が加わるという。キッドウェル・コーチの教えだ。最初の当たりで相手に押されてしまえば、肘を狙うことも、2人目がボールに絡むことも難しくなる。W杯1次リーグで同組のロシア、アイルランド、サモア、スコットランドという力自慢の相手に当たり勝つために、ハンセン・コーチは「タックルスキルを上げる時間をつくりたい」と引き続き個人練習の枠を設ける考えだ。
【SH茂野が地元大阪でさらにアピール】ラグビー日本代表は31日、パシフィックネーションズ杯第2戦のトンガ戦(3日、花園ラグビー場)へ向けて大阪府堺市で練習した。SH茂野海人(28=トヨタ自動車)は、地元大阪での活躍を誓った。
「自分がいたスクールの子供が減っていたり、中学校のラグビー部が休部になっている。もう一度盛り上がるきっかけに僕がなればと思っています」
島根・江の川(現石見智翠館)高に進むまで、大阪府岬町で育っただけに、自身初となる花園での代表戦への思いは強い。初戦のフィジー戦では先発して積極的なプレーを披露。首脳陣から高評価を得た。流、田中との激しいSH争いを勝ち抜くべく、故郷での活躍でさらに評価を上げる。
▽13人制ラグビー 15人制の「ユニオン」に対し「リーグ」と呼ばれる。ボールがよく動き、スピード感ある試合展開で、オーストラリアで人気が高い。激しいタックルは、アメリカンフットボールに近いと言われる。