今季限りで勇退の京産大・大西監督「ラグビー部は家族 家族のためなら頑張れる」
2019年08月28日 09:30
ラグビー
「歴史は浅くても伝統校になれる。誇りを持てるクラブになろう」
選手とも年が変わらず、「キャプテンみたいな感じだった」。だから、練習後によく夢を語り合った。話し合いを重ねながらできたのが、今も生きる3つの目標だ。(1)同大と互角に戦えるチームを作ろう(2)ラグビー発祥の国、イングランドの芝を踏もう(3)大学チャンピオンになろう。練習だけではなく、グラウンドの確保や寮の部屋の手配、新入生の勧誘など、あらゆることに忙殺されながら、就任年にAリーグ昇格を決めた。
順調な船出も、すぐ壁にぶちあたった。啓光学園(現常翔啓光学園)、天理大での現役時代、いずれも監督を務めた藤井主計氏の影響で「スクラムを押すという発想はなかった」とランニングラグビーを志向。だが、上位へはなかなか食い込めなかった。78年の京大戦ではスクラムで完敗。「FWが押されるとバックスが全く機能しないということを嫌というほど思い知った」。まだ新興校で、人材確保もままならない。「努力で強くなれるところはスクラムとモールだ」。それが、伝統のスクラムが誕生したきっかけだった。
花が開いたのは就任10年目だった。82年に初めて全国大学選手権に出場。16―45で敗れたが、早大相手に認定トライを奪うなどスクラムでは優位に立ち、名をはせた。そして、87年のAリーグ最終戦。10―9の僅差で、同大に初めて勝利した。90年にはイングランドに遠征、ケンブリッジ大と試合した。
3つの目標のうち、2つは成就した。しかし、大学選手権では過去7度進んだ準決勝で敗退している。今年がラストチャンス。「最後だから…とは思っていない。毎年同じ気持ちでチャレンジしているから」と特別な感慨は漂わせないが、部員の合言葉は「大西先生のために日本一」だ。
開幕を控えたある日。柔和な表情で練習を見守っていた大西監督の顔つきが、スクラム練習が始まると一変した。声を荒らげる時もある。こだわりが垣間見える瞬間だ。
時には2時間にも及ぶスクラム練習だけではない。体重が落ちないように焼き肉や鍋を全員で囲む“栄養合宿”しかり、早朝の筋力トレーニングしかり。今では強豪校が当たり前にやっていることを40年以上前から、人知れず続けてきた。
「私にとって京産大ラグビー部は家族。家族のためなら頑張れる」
69歳の今も、5時半に起床し、6時半からのトレーニングで目を光らせる。コーチ陣に指導を任せている時でさえ、練習中は決して座らない。20代の時と変わらないスタイルで、最後のシーズンに挑む。
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