サンウルブズ 渡瀬GM目に宿っていた強い光 開幕戦の勝因を紐解く
2020年02月02日 11:40
ラグビー
ラストシーズンを迎えたサンウルブズが、見事にレベルズとの開幕戦を制した。トップリーグとシーズンが重複し、選手集めに難航したチームとは思えない勝ちっぷりだった。なぜ、ほぼ危なげなく勝ちきるに至ったのか。試合後の2人の発言から、紐解いてみた。
まずはサントリー前監督の沢木敬介コーチングコーディネーター。攻撃を担当し、サインプレーによる2つのトライを生むなど、その手腕は見事の一言だった。集合から4週間での開幕は、過去4年とほぼ同じ。毎年のように「準備期間が足りない」とコーチも選手も嘆いてきたが、同氏は「スキルの成長は時間が掛かる。一番早く成果が出るのはフィットネス。(最初の合宿地の)市原ではとにかくフィットネスを磨いた」と説明した。
インプレー中のキックは18本。一般的に決して多いとは言えない数だが、それでもレベルズの倍を蹴り、フィットネス勝負に持ち込む意図が見えた。後半にはフリーキックを得た場面で、途中出場のSH斎藤が即座に裏へと転がすキックを放った。セオリーならスクラムだが、斎藤は「スクラムが良くない(劣勢)印象だった。あとはインプレーの時間を増やそうと話していたので」。斎藤の好判断はもちろんだが、80分間、チーム全体で意思統一できていたことを示す場面だった。
もう1人は所属のパナソニックの理解を得て、サンウルブズでのプレーを選択したフランカー布巻峻介の言葉だ。「以前はジャパン(日本代表)との兼ね合いもあって、僕自身、違うプレッシャーも感じていたし、行ったり来たりがあり、本当にコミット(集中)できたかというと、難しい部分があった。今年はスーパーラグビーに集中できる。その違いはある」。
日本代表の強化を目的に結成され、SRに参入したサンウルブズ。資格を持たない外国人選手も所属し、純然たる「強化機関」とは言えなかったが、選手の頭の片隅には常にセレクションの場という潜在意識があっただろう。時に成長を促すモチベーションになっただろうが、時にプレーを小さくし、何よりサンウルブズというチームそのものへの忠誠心を薄めていたことは否めない。もちろん今季も活躍次第で日本代表にはつながるが、過去4年のような強化機関の機能性は失われた。純粋にチームのために戦う姿勢が、推進力の源だったように思う。
日本代表資格を持たない外国出身選手にとっても、過去4シーズン以上に発奮する材料が調っていたと言える。今季限りでSRから除外されるチーム。布巻らと違い、帰る場所を持たない彼らにとっては、来季以降の再就職にも影響を及ぼすシーズンとなる。昨年11月にトヨタ自動車を退部したFB竹田宣純や、18年まで豊田自動織機所属だったSH木村貴大もまた然り。そうした真のプロたちの姿勢が、現役学生選手を含む、他の選手に好影響をもたらした面もあるだろう。
多くを求めず、4週間の準備でできることに徹し、活況なトップリーグの裏でやや忘れられた存在となった状況に「見とけよ、という感じだった」と言った布巻同様、反骨心を全員で共有した結果の白星。渡瀬GMの目に宿っていた強い光もまた、選手と同じ反骨心の表れだったことに気づかされている。(阿部 令)
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