上野が咲かす満開の桜 1年後の自分に手紙「頑張れ!」 五輪開幕戦のはずだった誕生日の誓い
2020年07月22日 05:30
ソフトボール
予定通りなら、桜の花びらの模様を網部分に入れた“桜吹雪グラブ”を手にして、4年に1度の祭典の幕開けを告げるはずだった。
元々「他国の選手は自分たちの道具を注目して見ているんですよ。日本ぽいグラブにしたくて。日本といえば桜だなって」という考えで、15年から白い模様を入れていた。1年ごとに1枚ずつ花びらをピンクに着色。五輪用は、花びらが5枚そろった開花模様もピンクにしていた。
手を入れる箇所にも気持ちを表した。刺しゅうは「IT’S SHOW TIME(ショーが始まる時間だ)」。ソフトボールは、24年パリ五輪で除外になる。今回が自身最後の五輪かもしれない。そこで08年北京に続いて世界一になるために、「楽しみたい。ベストパフォーマンスを出したい。ここに懸けているそんな思いを、言葉にしたかった」と英語で表現した。
1年ごとにグラブを新調するとはいえ、商売道具に込めた2020年の思いや情熱は、来季も同じだろう。現在の状態は良好だ。1月から続けてきた近年にない“本気の調整”を4月だけ小休止。5月から肩をフル稼働させている。昨年の顎の骨折は完治。不安材料が見当たらない。
「1月からずっと気が張っていたので、4月は一度リセットするためにものらりくらりと過ごしました。5月の既に暑くなっている時季にしっかりと投げ込みができたので、濃いものができたんじゃないかなと思っています。成果を9月のリーグ戦で試せれば」
コロナ禍で得たものもある。ヨガに初挑戦。1週間に1度、1時間のオンラインレッスンを受けた。「呼吸が凄く難しかった。鼻呼吸でいかに酸素を体に巡らせるのか、というのが発見だった。日常でも取り入れ、日常生活を変えることでパフォーマンスにつながればいいなと思います」。38歳の向上心が衰えることはない。
「1年の延期はあまり心配していなくて。1年分、積み重ねるものが増えるので。それを来年発揮できるようにしたいな。1年延期で球種が増えた、投球の幅が広がったとなるように準備をしたい」
17日に21年の日程が発表になった。39歳の誕生日前日の7月21日に、全競技に先駆けて開幕する。来年こそ、その手で満開の桜を咲かせる。
《女房役が太鼓判》代表と所属チームで女房役を務める我妻悠香(25)は「試合がないのがもったいないくらいのボールを投げている」と上野の状態に太鼓判を押した。曲がる位置、曲がり幅など細かい精度を追求してきた。浮き上がるように変化する「ライズボール」の切れは特に安定しているという。新しい球種にも取り組んでいるようで、「相手チームや試合のネット配信の状況に応じて、実戦で試したい」と、五輪まで秘密裏にテストを重ねるようだ。
▽金メダルへの道 6チームが1回戦総当たりの1次リーグをし、上位2チームが決勝戦、3、4位チームが3位決定戦を行う。北京五輪まであった敗者復活戦を含む「ページシステム」は採用されない。
◆上野 由岐子(うえの・ゆきこ)1982年(昭57)7月22日生まれ、福岡市出身の38歳。小学3年から競技を始め、九州女高(現福岡大若葉)から01年にチームの前身の日立高崎入り。国内リーグの勝利数、奪三振数、完全試合回数などで数々の記録を樹立。五輪初出場の04年アテネで銅。08年北京は、決勝までの2日間3試合を1人で413球を投げ抜き金メダル。1メートル75、73キロ。
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