データで見る八村の第44戦 0秒18の“ズレ”の中に見たディフェンスの課題

2020年08月04日 09:41

バスケット

データで見る八村の第44戦 0秒18の“ズレ”の中に見たディフェンスの課題
ゴール下でシュートに持ち込む八村(AP) Photo By AP
 映像を再生しながらストップウォッチで3回計測したがすべて0秒18だった。手動で誤差があるので実際はもっと短い時間だったと思う。
 場面はウィザーズ対ペイサーズ戦の第3Q残り1分55秒。ペイサーズのポイントガード、T・J・マコネル(28)がベースライン際の右サイドからいったん左サイドに抜けたあと“Uターン”したときのプレーだった。最後のランニング・ステップから右手でボールをリリースするまでの時間が0秒18。マークしていたのはウィザーズの八村塁(22)で、右手をかざしながら追いかけたがブロックできなかった。

 マコネルの身長は185センチとなっているが実際は数センチ低いかもしれない。これに対して八村は203センチ。ペイサーズのスモールフォワード、ダグ・マクダーモット(28)のスクリーンでスイッチしてマコネルをマークしたのだが、マッチアップ・タイム(5秒50)の中でサイズを生かして得点を阻止することはできなかった。

 多くの小柄な選手がそうであるように、マコネルはランニング・ステップとリリースを「1・2・3」の等間隔で組み立ててはいない。最後の0・18秒だけがとりわけ短いのだ。それはサイズで優る八村が自分を追いかけているのがわかっているので、最後だけはクイックリリースにしてタイミングを変えていた。

 ペイサーズ戦で八村は自身のシュートを3度ブロックされているが、相手に対しては1度も記録できなかった。今季は44試合に出場しているが、ブロックショットはわずかに8回。ドラフト2巡目(全体38番目)に指名された同期の新人のダニエル・ギャフォード(21=208センチ)が43試合で56回のブロックショットを記録しているのと比べると、この部門だけはずいぶんとさびしい数字になっている。

 ディフェンスは見た目にも一生懸命に頑張っているのがわかる。相手がシュート体勢に入ると必ず手を出してコンテストしている。“手”を抜いているわけではない。ただし気になるのはオフェンス時とディフェンス時の「減速率」だ。

 この日、八村とマッチアップして34得点をマークしてブロックショットも4回記録したペイサーズのT・J・ウォレーン(26)はコートにいるとき平均時速6・80キロで動いている。止まっているときもあるのでNBA選手の時速はこれくらいになる。そしてウォーレンのオフェンス時のスピードは6・93キロでディフェンス時は6・68キロ。攻守が切り替わったときの「減速率」は3・6%でしかない。

 一方、八村の平均時速(7・16キロ)とオフェンス時の速度(7・74キロ)はウォーレンを上回っている。ただしディフェンス時になると6・58キロと下回っており、攻守の「減速率」は15・0%。守っているときのスピード・ダウンがウォーレンより大幅に大きくなっている。

 新人ながら守備のスペシャリストとして活躍している76ersのマティス・サイブル(23)の「減速率」はわずか2・5%。守るという行為の上で大事なのはいかに細かく動いて相手より先回りしているなのかだが、八村は数字で見る限り、シュートの精度以上にこの部分に課題を残している。

 タイミングを外されたマコネルの0秒18が縦軸なら、15・0%の「減速率」は横軸。この2つを改善するにはもちろん経験が必要だが、多くの専門家が語っているように八村はまだ“伸びしろ”を残している。タイミングをずらす技術に慣れることと、守っていても細かく動くこと…。ブロックショット部門の改善にはハンド・スピードの向上とともに、この2つが必要だと思う。(高柳 昌弥) 

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