【陸上】高橋礼華さん リレー侍まさかの途中棄権、失敗糧に強くなれる!3年後のリベンジ期待

2021年08月08日 08:45

陸上

【陸上】高橋礼華さん リレー侍まさかの途中棄権、失敗糧に強くなれる!3年後のリベンジ期待
陸上男子400メートルリレー決勝 バトンパスを失敗する第1走者の多田(右)と第2走者の山県 Photo By 共同
 【メダリストは見た 高橋礼華さん】陸上男子400メートルリレー決勝で日本(多田、山県、桐生、小池)は1走から2走へバトンが渡らず、まさかの途中棄権に終わった。前回16年リオデジャネイロ五輪の銀メダルを受け、頂点に挑んだ攻めのバトンパスでミス。リオ五輪バドミントン女子ダブルスで金メダルに輝いた高橋礼華さん(31)は失敗を糧に3年後の巻き返しに期待した。
 バトンがつながらずに棄権という結果にはとても驚きましたし、残念で仕方ありません。陸上の短距離は世界で一番速い選手、チームを決める、単純で凄い競技。今の日本は100メートル走でメダルを獲るのは難しい状況にあると思いますが、リレーではバトンパスを極めて金メダルを狙える位置まで高めてきました。決勝に残り、攻めにいってミスが出ましたが、ここまで努力をしてきた選手を責めることはできないと思います。

 今回は選手として出場するのではなく、外から見て「五輪」という舞台の難しさを改めて感じました。リレーの4人、苦戦したバドミントンもそうですが、いろんな競技で実力を発揮できなかった選手がいました。メダルを目指して結果を出そうという思いが強すぎたのかな、と…。

 私たちも14年に日本バドミントン界で初めて世界ランキング1位になって、リオ五輪に向けて周囲の期待やメディアの注目を集めました。その中で、リオ1年前の世界選手権で普通なら勝てる相手に3回戦で敗退。五輪の金メダルを目標に掲げていたのに「こんなところで負けるのか」と落ち込みました。

 そこでパートナーの松友と話し合って敗因を分析。世界1位のプレッシャーと「五輪の1年前で結果を出さないと」という焦りが原因と考えました。どうすればいいのか話し「結果を出そうとするのではなく、一試合一試合、自分たちのベストを尽くそう。予選の1試合目から自分たちのやってきたことを出そう、出そう、出そう」と決めました。力を出せば負けないという自信はありましたし、リオ本番では結果を気にすることなく楽しめました。ダブルスはペアを組むことの難しさもありますが「金メダル」という共通の目標があったからこそ、修正できました。この挫折を味わうことがなければ、リオの優勝はなかったと思います。

 リオの400メートルリレーで日本が銀メダルを獲得するところは競技場で目の当たりにしました。選手村で女子5000メートルの決勝にまで進んだ上原美幸さんと仲良くなって「見に行く」と話すと「リレーの決勝もあるんです」と言われて。私はリレーにそれほど詳しくなく、交流があった山県選手に「頑張ればメダルもいけると思うんです」と言われて「そうなの?凄いね」と思ったぐらいでした。

 競技場に行くと応援に来ていた陸上チームの人に「こちらで一緒に見ましょう」と言われて解説してもらいながら観戦しました。バドミントンの体育館だと入っても数千人ですけど、何万人も入る競技場が満員になって「こんなところで走るの?メチャクチャ緊張するだろうな」と思いましたね。スタンドの上の方から見ると、選手は豆粒のようでしたが、それでも驚くほどのスピードに感動したことを覚えています。

 あの結果を受けて金メダルに挑んだ東京五輪。メンバーはとても悔しい思いをしたと思います。桐生選手は個人で100メートルに出場できず、誰よりもリレーに懸けてきたはず。レース後も涙をこらえながら取材に応じ、誰よりも悔しい思いをしているのではないでしょうか。山県選手と最後に会ったのは18年のジャカルタ・アジア大会の結団式で、当時も日本選手団の主将でした。真面目で誠実を絵に描いたような選手で、そもそも日本の主将を任されるのが凄いことで周囲からも信頼されているんだと思います。

 団体競技や複数で戦う種目は勝てば喜びが何倍にもなりますが、負けると何人分もの責任を感じることがあります。それでも誰かを責めるのではなく、互いを支え合ったリレーのメンバーを見ると、みんなで戦うことの素晴らしさを感じずにはいられませんでした。

 悔しい思いをした分だけメンバーは強くなって帰ってくると思います。バトンミスを反省して修正できれば次は記録も伸びるはず。3年後のパリ五輪はメンバーがどうなるか分かりませんが、メダルは脇に置いて東京でのリベンジを果たしてほしい。そう願います。

 ◇高橋 礼華(たかはし・あやか)1990年(平2)4月19日生まれ、奈良県橿原市出身の31歳。宮城・聖ウルスラ学院英智中、高を経て09年日本ユニシス入社。松友美佐紀との女子ダブルスで14年10月に現行の世界ランキング制度で全種目を通じ日本勢初の1位。16年リオ五輪で日本勢初の金メダルを獲得。20年8月に現役引退。現在はU―19日本代表コーチ。

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