歴史に残るミラクルショット 岩井明愛の片手打ちチップインバーディーを生み出したもの
2023年06月21日 12:29
ゴルフ
「やってやるぞという気持ちで挑みました。バーディーを何個取ったか分からないくらい集中していた」。会見に出席した岩井明は満足そうに話した。
最終日は首位の山下、そして3位の妹の岩井千怜(20=Honda)と最終組で回ることになった。姉妹の最終日最終組対決はツアー史上初。しかも千怜が優勝した5月のRKB×三井松島レディースのプレーオフと同じペアリング。ファンの注目は最終組に集まった。
前半の主役は、山下を4打差で追う岩井明だった。1番でバーディー発進して3打差に追い上げ、山下が伸ばした5番でもバーディーを奪い追走した。
そして、最大の見せ場は8番パー4だ。第2打はグリーン奥のラフに転がり、バンカーの縁に止まった。普通にスタンスを取るには、右足を深いバンカーに入れなければいけない。左打ちも試したが、岩井明が選んだのは片手打ちだった。
「パッと思いついたのがバンカーに足を入れてクラブを短く持って打つか、片手打ちだった。確率的にどっちが高いか考えて、片手打ちの方が打ちやすかったので選択した」
体を開いて構え、右手だけで54度のウエッジを握り、低く打ち出した。ボールはグリーン面を下り、14ヤード先のカップに収まった。日本女子プロゴルフ協会関係者も「見たことがない」と証言するミラクルチップインバーディー。グリーンを取り囲んだ観客からはどよめきと大歓声がわき上がった。
「こんなことがあるんだと思った。楽しかった」。岩井明はまるで他人事のように話した。むしろ同組の2人の方が驚いていた。
この時点で2打差に詰め寄られた山下は「あれはほんまに凄かった。勢いが凄かったし、片手打ちで入ったのも凄いなと思って、自分もバーディーを取りたいという気持ちになった」と脱帽した。
妹の千怜は「片手打ちはリスクがあると思った。シャンクも、チャックリも、トップもありそうだし、うまく出るのかなと思ったけど、見事に綺麗に打ったので“魅せるな”と思った」と称賛を惜しまなかった。
岩井明は元々、抜群の運動神経の持ち主だ。幼少期からゴルフと並行して陸上競技にも取り組み、小学生時代には地元サッカークラブでプレーした経験もあり、今でもリフティングを軽々とこなす。
昨オフには所属先Hondaの硬式野球部の練習に参加し、打撃練習では綺麗なバッティングフォームで強烈な打球を打ち返し、守備では軽快なフットワークと巧みなグラブさばきを披露した。
ただミラクルチップインバーディーは、センスだけで生み出したものではない。試合で片手打ちをやったのは初めてだが、必ず練習前に行うメニューであり「そんなに珍しいことではない」という。日々の積み重ねがあるからこそ、寄せるイメージができたのだ。
岩井姉妹は常々「見ている人を楽しませるプレーをしたい」と話している。振り返ってみれば、RKB×三井松島レディースのプレーオフでも、岩井姉妹は揃って第2打で1Wを握り、直ドラでグリーンを狙って、ギャラリーの大喝采を浴びた。そうしたプロ意識も片手打ちの選択につながったのだろう。
最終的に山下を捉えることはできなかった。ただ、ギャラリーを十分に楽しませたことは間違いない。岩井明がこれからどんなプレーを見せてくれるのか。ゴルフファンも、メディアも目が離せなくなりそうだ。(スポーツ部専門委員)
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