元ラグビー日本代表・大八木氏スペシャル対談土田会長編 第1回 日本代表の現状を会長はどう見ているのか
2023年09月05日 06:00
ラグビー
大八木氏(以下大八木) 競技経験、コーチ経験もあった土田会長は世界のラグビーを自分の目でしっかり見てこられたと思います。今回のワールドカップ、日本代表は実際にどれくらいの成績を挙げられると考えていますか。
土田会長(以下土田) 今の実力、アウェー感、フランスで試合をするということを踏まえて考えると実力的には10位から12位(世界ランク14位 8月28日時点)には入っていると思います。そういう意味ではベスト8に入れるかどうかというのが現状だと思います。
大八木 選手たちの多くが優勝という言葉を口にしていますが。
土田 選手たちが日本代表の発表会見でも優勝、優勝と言ったのは、急に口にしたのではなく、19年のワールドカップ準々決勝で南アフリカに負けた時に、稲垣が終わった直後のインタビューで“絶対悔しいです。優勝を狙わないとこれ以上は上には行けません”と言った言葉がチームに浸透していった。昔じゃ考えられないじゃないですか。ベスト8で。95年の南アフリカのワールドカップではオールブラックスに17―145で負けました。
大八木 南アフリカでのワールドカップが映画になったインビクタスでもニュージーランドの強さを示すときにどうしても出てくるシーンですね。世界のラグビーはあのころから大きく変わったね。その世界の流れに日本もついていかないといけない。
土田 あの試合から想像したら勝てると思えないじゃないですか。本当に強くなったと思います。
前回ベスト8に行った経験値などもあります。今回の大会はルール上からしてかなりの数のレッドカード(一発退場)が出ると思います。日本代表も国内の5試合で2人、レッドカードが出ました。試合が始まって、たった5分くらいで退場者が出てしまうと、試合もプラン通り運べなくなります。そういう意味では、レッドカードが1試合に2人、3人出るケースも考えられます。どの国も予期せぬ事態が起こる可能性があります。
大八木 なぜ、こんなに厳しい判定が出るようになったのですか。
土田 タックルの事故、首へのタックルの危険性もあるのですが、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の判定が優位になりました。私もワールドカップのU20の試合を(7月に)南アフリカまで視察に行ってきたのですが、今年になってTMOレフリーの人数が凄く増えていました。そこで全部チェックが入ってビデオを検証して伝えるので、レフリーも余計にビデオを止めて見ることになります。
大八木 危険なタックルをスロー映像で見ると、最初は低くタックルに入っていたとしても、滑って高くなっているケースが多いですよ。どうみても故意じゃないですよね。
土田 滑って顔にぶつかったり、首に腕が入ってしまったりしています。スーパーラグビーが昨年度のシーズンから、レフリーが優位にジャッジして、TMOはレフリーが要求したら答えるというシステムを試しました。
反則が起こった場合、最初はイエローカードを出して、その場でビデオ判定していると時間がかかるので、一時退場となった間にプレーを続けながら一発退場に該当するのかTMOの結果を待つようにしました。
今回のワールドカップでもこの「バンカー」を正式に導入することが8月21日に発表されました。
もう一つはレッドカードで退場しても、20分後に別の選手が出場できるようにしました。でも、今年のテストマッチ、ワールドカップではそこのルールは適用されません。
大八木 3試合、出られなくなるのはチームにとって非常に大きなダメージですね。
土田 19年のワールドカップ以上にTMOが厳格化されます。TMOレフリーの人数も増えています。昨年のサッカーのワールドカップはVARのレフリーは9人だったそうです。そのシステムはソニーがやっています。ラグビーワールドカップはそこまでの人数にはならないと思いますが、コンタクトスポーツは今後、このようなスタイルになるんじゃないですか。大八木さんの“必殺技”なんか、全部レッドカードですよ。スローモーションで見なくても明らかに踏んづけていましたからね。
大八木 ほんまやね。20年間くらい試合出られなくなるね。なんでやねん!!
土田 本当に何か問題がありそうなプレーがあれば必ず試合を止められます。
大八木 実力通りの試合ができるかどうか、レッドカードは大きな課題となりますね。
◇土田 雅人(つちだ・まさと)1962年(昭37)10月21日生まれ、秋田県秋田市出身の60歳。秋田工からラグビーを始め、同志社大―サントリー。同志社大時代は大学選手権3連覇に貢献、サントリー監督として日本選手権優勝。97年から99年まで日本代表フォワードコーチ。22年から日本ラグビーフットボール協会会長。現役時代のポジションはナンバー8。日本代表キャップ1。
◇大八木 淳史(おおやぎ・あつし)1961年(昭36)8月15日、京都市生まれの62歳。伏見工からラグビーを始め、同志社大―神戸製鋼。同志社大時代は大学選手権3連覇、神戸製鋼時代は日本選手権7連覇に貢献。現役時代のポジションはロック。日本代表キャップ30。
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