【元横綱稀勢の里コラム】探究心ある大の里よ、相手の上を行く相撲を貫け

2024年03月06日 07:00

相撲

【元横綱稀勢の里コラム】探究心ある大の里よ、相手の上を行く相撲を貫け
二所ノ関親方(右)と大の里 Photo By スポニチ
 10日から始まる春場所に向け、2月下旬に大阪入りしました。番付発表後には朝乃山や私の同期入門で再十両を決めた北ハリ磨も出稽古に来てくれて部屋の稽古も熱く盛り上がっています。
 4日は二所ノ関一門の連合稽古に参加しました。大の里も参加して時津風一門から参加した大関・霧島に3番取りましたが、琴ノ若ともやってほしかったのが本音。せっかくの機会なのだから「見る稽古」の重要性も感じて、大関のいいところをどんどん盗んでほしいものです。2大関の三番稽古は内容も良く、私自身も勉強になりました。新大関の琴ノ若は相手の体圧を分散させる動きが目立ちました。当たるポイントの位置がいいのでしょうか、踏み込んでいくと下からすくい上げてきて体勢を崩され、玉鷲との稽古ではおっつけにいっておいて相手の様子をみながらバチンと当たる。独特のスタイルがあります。

 その分散させる力を封じこんで自分のペースに持ち込んだ霧島のさばきのうまさにも見応えがありました。まわしを切る技術が秀逸で、相手十分にさせない取り口はさすが。これに20キロくらい増量して圧力が増せば鬼に金棒でしょう。

 大の里は新入幕の場所で11勝し、西5枚目まで番付を上げました。昨年の春場所の期間中に入門して1年。順調に番付は駆け上がってきましたが、今後も追求すべきものは変わりません。恵まれた体を生かし切る立ち合いと、圧力をかけ続ける攻め。どの力士にも共通するテーマで、技術よりも大事なことだと思っています。

 求めるものはとても大きいもので、自分も極めることができないまま引退しました。私もまわし姿でよく胸を出していますが、大の里の立ち合いはまだ10%も完成されてないでしょう。師匠ですので辛口にはなりますが、自分自身を過大評価しないのが大の里のいいところ。ダメなところはダメと認めることができています。大相撲はアマチュアとは違うと聞かせていますし、自分のアドバイスなどを納得して受け入れる柔軟な考えを持っています。探究心もありますから、どんどん追求してほしいものです。

 今場所は上位陣の研究対象となっているのは間違いありません。立ち合いの厳しさは先場所までとは比べものになりませんが、今までやってきたことを試し、どこまで通用するか。勝ち負けも大切ですが、相手の上を行く相撲を貫き結果につなげてほしいと思っています。 (元横綱・稀勢の里)

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