【独占インタビュー】高橋藍「悔しさ埋めるにはイタリアに…」2度目の五輪へ、コーチ内外で磨いた3年間
2024年04月17日 05:30
バレーボール
「凄く悔しさが残った。もっと海外の選手と戦った経験があればと思った。それがイタリアに行くきっかけになった。悔しさを埋めるにはイタリアに行くしかないと。人生が動いた大会になった」
東京五輪後、世界最高峰イタリア1部リーグのパドバに加入した。当初はリベロが主戦場だったが22~23年はアウトサイドヒッターの定位置に。昨年移籍したモンツァでも主軸で活躍している。
「シーズンごとに成長している感覚がある。パドバは若手が多かったけど、モンツァは世界のトップ選手がいるので練習でもハイレベルなプレーが飛び交う。トップ選手に追いつきたいという意識がプラスになっている」
3年でスパイクの技術が格段に進化した。
「バリエーションが増えた。2メートル級のブロックが2枚、3枚ついてくるので、強いスパイクを打つだけではなく、リバウンドを取るのか、ティップ(フェイント)などで決めるのかという対応が求められる。決め打ちせず空中でブロックを見て考えて決め切れるようになった」
日々のトレーニングでフィジカルもレベルアップした。
「海外の選手は挙げる重量も迫力も凄い。張り合うために筋力をつけないといけない。今はスクワットクリーンで80~90キロを挙げるし、下半身の力がかなり上がった。最高到達点は3メートル43くらいだったのが3メートル50近い。滞空時間も長くなった」
今年1月下旬に左足首を負傷し離脱。復帰まで3週間を要した。ただ焦りはなかった。
「代表から休みがなくて疲労もあったので、体を休めてできる範囲でトレーニングをして復帰した時さらにレベルアップできるようにしようと1日でポジティブに切り替えた」
1週間ほどで松葉づえが取れると、足首の可動域を広げるチューブトレ、スクワットを再開し2週間後にはジャンプも始めた。2月中旬に復帰し、レギュラーシーズン5位で自身初のプレーオフに勝ち上がると、同4位ルーベ、同1位トレンティーノを連破し決勝に進出。18日からはタイトルを懸けて同2位ペルージャに挑む。充実のクラブシーズンを終えると、日本代表に合流し5月21日開幕のネーションズリーグ、そしてパリ五輪に臨む。
東京五輪後は人気も急上昇した。インスタグラムのフォロワーは200万人を突破し、女性ファッション誌の表紙を飾り、化粧品ブランドのアンバサダーに起用された。コート外の活動には高橋なりの考えがある。
「日本ではサッカー、野球が(人気)トップにある中で、バレーボールも面白いスポーツだと伝えるためにSNSなどで発信を続けている。こんな選手がいると知ってもらえば、バレーボールに興味を持ってもらえると思う」
パリ五輪では52年ぶりのメダル獲得の期待がかかる。
「トップチームに勝ってきて力が付いたという自信がある。それぞれが(クラブ)シーズンを過ごし強くなって帰って来るので去年よりも強い日本代表が間違いなくつくれる。トップ3に入れる力があると思っている。パリ五輪ではメダル獲得に向けて頑張りたい」
チーム最年少だった東京五輪とは日本代表における立場も、高橋自身の意識も異なる。
「東京では引っ張ってもらったけど、いろんな経験をして結果を出して、チームで頼りにされる選手になれた感覚がある」
スパイクと見せかけてトスを上げる「フェイクセット」やパリ五輪予選で披露した「背面アタック」などトリッキーなプレーも高橋の魅力の一つ。2度目の五輪で目指すものはメダルだけではない。
「世界のトッププレーヤーの一人として日本の高橋藍という選手がいること、面白いバレーボールをする今までにいない新しい選手だということを見せつけられればいい」
◇高橋 藍(たかはし・らん)2001年(平13)9月2日生まれ、京都市出身の22歳。小学2年時に兄・塁(現サントリー)の影響でバレーボールを始める。京都・蜂ケ岡中では3年連続全中に出場し2年時優勝。東山高3年時に春高バレー優勝。日体大在学中の21年パドバ加入。23年モンツァ移籍。20年日本代表初選出。21年東京五輪8強。22年世界選手権16強。家族は両親、兄、妹。1メートル88、83キロ。名前の由来は「藍色のイメージで、素直で自分の意思を持ち、周りに流されず強く育ってほしいという意味」。
▽パリ五輪のバレーボール男子 出場枠は開催国フランスを含む12。昨年の五輪予選で日本など6カ国が出場権を獲得済み。残る5枠は5月21日開幕のネーションズリーグ1次リーグ終了時(6月24日)の世界ランクで決まる。
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