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やり投げ“チーム北口”結実の金「自分を信じてくれる人がいたから」激論NTCの夜を越えて

2024年08月11日 10:24

陸上

やり投げ“チーム北口”結実の金「自分を信じてくれる人がいたから」激論NTCの夜を越えて
<パリ五輪・女子やり投げ決勝>金メダルの北口は日の丸を掲げ笑顔(撮影・岡田 丈靖) Photo By スポニチ
 女子やり投げ決勝で、23年世界女王の北口榛花(JAL)が、日本女子のトラック・フィールド種目で日本初の金メダルを獲得した。1投目に65メートル80の今季自己ベストをマーク。得意の逆転劇ではなく、あざかやな先行逃げ切りで偉業を達成した。
 活躍の裏に“チーム北口”の支えがあった。姿勢矯正の重要性を痛感していた20年秋、スポーツ界のつながりの中で応用解剖学が専門で当時筑波大准教授の足立和隆さんと知り合った。

 映像を分析した足立さんは「幼稚園児が走っている感じでした。上半身と下半身の連係ができていなかった」と振り返る。通っていた治療院の上野真由美トレーナーらも加わり姿勢の改善に本格的に着手。コロナ禍のためダビド・セケラク・コーチはチェコから来られなかったが、21年春には東京・上板橋の焼肉店でささやかな決起集会を開催。猫背を矯正するためのプロジェクトが始まった。

 北口が目指す姿勢は「教室にあるガイコツ」。常に真っ直ぐな姿勢を意識しながら大小の階段上りなどで下半身の筋力をつけた。座面が18度前傾した特注の椅子も作り、骨盤を前傾させるよう意識づけた。セケラク・コーチと行っていたチェコでの筋力、技術面での取り組みに加え、日本チームでの科学的知見を生かした姿勢矯正やマッサージによって故障が減少。また、今年1月からチェコに管理栄養士の浜田綾子さんが同行。外食中心から和食中心となり、体調も整った。

 だが、多くの取り組みが一つにつながらず、今季は調子が上がりきらなかった。分岐点となったのが5月14日の夜。都内の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)にチーム北口の7人が集結した。その目的は「洗いざらい全てぶちまけること」と足立さん。北口や日本人のトレーナー陣、チェコ人のセケラク・コーチもいた。シーズン中でも筋力強化を求め続けるセケラク・コーチや、北口の長所である柔軟性を取り戻そうとした日本人トレーナー陣が妥協点を策定した。

 また、チェコ語が堪能になった北口がセケラク・コーチの言葉について「怖い」と号泣。モチベーターでもあるコーチに対して、正直な思いを吐露する場面もあったという。2時間におよぶ激論の末にたまった鬱積を全て吐き出し、方向は一つになった。

 絶好調だった昨年に比べると、苦しい道のりが続いた。それでも、何とかたどり着いた五輪の頂。「正直、何を信じているのかも分からなくなった時があった」と振り返った北口は「自信を持って臨めたのは、やっぱり自分を信じてくれる人がいたから」と感謝した。

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