【内田雅也の追球】「終決者」と「中間点」の教訓 スアレス打たれ、打線低調の阪神 自分を見つめ直す時

2021年07月02日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「終決者」と「中間点」の教訓 スアレス打たれ、打線低調の阪神 自分を見つめ直す時
<神・ヤ>9回2死一、二塁、マウンドに集まるスアレス(中央)ら(撮影・平嶋 理子) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神1ー6ヤクルト ( 2021年7月1日    甲子園 )】 完璧、無敵のように思えた阪神のクローザー、ロベルト・スアレスも人間である。打たれることも、失点することもある。これまでの貢献をねぎらいこそすれ、誰も責めることはできない。
 同点での9回表登板は前夜と同じ、セーブ機会ではない。9回打ち切りの特別ルールでの起用である。ただ、自身初の3日間連投だった。目には映らないが、疲労がなかったとは言い切れない。同点や僅差リードで休ませるのは難しいが、今後、首脳陣が配慮すべきなのかもしれない。

 もったいなかったのは1死からの山田哲人中前打、2死からのホセ・オスナ中前打、川端慎吾四球はいずれも1ボール―2ストライク、または0―2と追い込んでからだった。「あと1球」で決めきれなかったのだ。

 そう、クローザーは決めきるのが役目だと言える。マイクル・コナリーの小説に『終決者たち』(講談社)がある。ロサンゼルス市警でコールドケース(未解決事件)を追う刑事ものだ。原題は『THE CLOSERS』と野球のクローザーにたとえている。

 「われわれは9回、試合の勝負がかかっているときに投入される……クローザー(終決者)だ」と班長のセリフがある。「失敗すれば、試合は終わりだ」

 そういうことだ。雨にも打たれての敗戦は、スアレスがやられた試合として記憶しておきたい。

 7回まではジョー・ガンケル、奥川恭伸の見事な投手戦で、ともにソロ本塁打だけの1―1。8回裏無死一塁での小野寺暖のバント失敗(併殺)は確かに痛い。それ以上に、依然として打線が低調なのが気になる。

 6月25日からの甲子園6試合で2けた安打は29日だけ。それもあの2死からの7連打があったお陰だ。つまり、この1週間はずっと低調なのだ。

 阪神は72試合目、シーズン143試合のちょうど中間点だった。
 マラソン解説の金哲彦が<中間点を折り返し点と思うべからず>と書いている。著書『金哲彦のマラソンレース必勝法42』(実業之日本社)にある。<後半の方が長く感じる>ためで<フォームチェックを忘れずに>、さらにレースが進めば<相手を気にしない>とある。

 なかなか、自分のフォームをチェックするのは難しい。金哲彦は他人のフォームをチェックしてみて、良しあしを感じることや、自分を客観視することの重要性を説いている。

 どこか今の阪神に通じている。この夜は教訓的な敗戦だったのだ。2位の巨人とは2ゲーム差になったらしい。

 まずは自分たちの再点検である。各打者や投手陣の状態を見直したい。先の長い、残り半分のレースを駆け抜けるために、今は自分を見つめる時だろう。 =敬称略= (編集委員)

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