【内田雅也の追球】リズムと流れの要素…特に引き寄せる守備は併殺プレー、攻撃は一発で決めるバント

2022年04月09日 08:00

野球

【内田雅也の追球】リズムと流れの要素…特に引き寄せる守備は併殺プレー、攻撃は一発で決めるバント
5回、初球に送りバントを決める中野 Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神3ー3広島 ( 2022年4月8日    甲子園 )】 勝ちきれなかったとはいえ、阪神は試合の流れをつかんでいた。開幕当初のどん底状態は脱した。そんな光明が見える引き分けだった。
 野球は攻守が入れ替わりながら試合を進めていく。攻撃と守備は互いに関係しながら流れができる。大切なリズムをつくるのが守備である。

 特に流れを引き寄せるのが併殺と言われている。たとえば、5回裏の反撃の1点を呼んだのは直前の守りでの併殺だった。5回表1死一、二塁、3番手で救援登板した浜地真澄が長野久義に4本のファウルで粘られながら三ゴロ併殺に切ったのが大きかった。
 もう一つ、攻撃のリズムを生む要素に「バントを一発で決める」がある。送りバントを最初のストライクで決めると得点への流れができる。

 その点で5回裏無死一、二塁で中野拓夢が、6回裏無死一塁で梅野隆太郎が送りバントを初球に決めたのは大きかった。5回裏は糸井嘉男の左犠飛、6回裏は代打メル・ロハスの右越え同点二塁打を呼んだのである。

 先発・藤浪晋太郎が4回3失点と苦しい試合展開だった。ボール先行でリズムもテンポも悪く、守りの時間は長くなった。これでは攻撃に移るリズムが生まれない。

 1、2回表と失点し、登板3試合にまたがり、8イニング連続での失点である。4回表にも失点し直近10イニング中9イニングで失点。これでは守備陣(つまり攻撃陣)もさすがにつらい。

 一方で救援陣はよく投げた。反撃に転じられたのは救援陣が無失点で踏ん張ったからである。

 開幕当初から不安視されていた救援陣だが、先発要員だった小川一平が中継ぎに回り、ラウル・アルカンタラが復調して整備されてきた。

 さらに新たにクローザーとなった若い湯浅京己が素晴らしい。快速球に鋭いフォークのけれん味のない投球に加え、この夜は守備も光った。延長11回表、無死一塁、堂林翔太の投前送りバントを実に素早い処理で1―6―3の併殺に仕留めた。

 その裏、無死一塁からの送りバントを熊谷敬宥が第1ストライクで決めた。本来であれば、サヨナラ勝利の流れだった。

 忘れていた勝利へのリズムと流れを思い出した試合として記憶しておきたい。=敬称略=(編集委員)

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