【虎番リポート】阪神・村上 ブルペンでは「最悪」も、フォームよみがえらせた魔法の「カーブ」

2024年04月16日 05:15

野球

【虎番リポート】阪神・村上 ブルペンでは「最悪」も、フォームよみがえらせた魔法の「カーブ」
笑顔で投内連係の練習に臨む阪神・村上(右)と才木(撮影・大森 寛明)
 今季阪神の甲子園開幕ゲームとなった9日広島戦の先発を託された村上は7回無失点の快投で今季初勝利を手にした。昨季の活躍を知る者からすれば何も驚くことのないMVP右腕の“平常運転”。ただ、時計の針を試合直前に戻して取材を進めると村上がいかに“よみがえった”かが分かる。
 「あ、ヤバいな…って。全然、球がいっていなくて、指にも(ボールが)かかっていなくて。ブルペン(での投球練習が)終わってかばんを持ってベンチに行くんですけど、その時も“ヤバいな…。割り切るしかないか”と思っていました」

 試合前ブルペンの出来は「最悪」だった。本人が「こんなに悪かったのはあまりない」と口にするほどのレベル。シーズン初登板だった2日のDeNA戦(京セラドーム)が3回5失点だっただけに2週連続の苦投も覚悟した。実際、ブルペンにいた他の人物も声をそろえた。安藤投手コーチは「確かに悪かったんだよ」と口にし、ボールを受けていた捕手・坂本は状態を考慮したゲームプランを練り始めたそうで「ブルペンが悪かったんで(球種も)全部使って5回までいけばいいかな」と早期降板も頭をよぎっていたという。

 そんな危機的状況から背番号41はいかにして白星をつかみ取ったのか。答えは序盤に多投した「カーブ」にあった。元々、バッテリーはこの試合で本来の持ち球であるカーブと、さらに球速を20キロほど落としたスローカーブを配球に加えることを打ち合わせで決定。実際、36球を投じた2回までにカーブは約17%の6球を数え、80キロ台も2球使った。昨季カーブの割合が約4%だったことを考えれば序盤から多投していたことが見て取れる。試合前の時点では広島打線のデータにはない球種で幻惑させることが意図だったが、実は“副産物”があった。

 「昨年、ブルペン捕手の片山さんにカーブを投げている時が一番フォームがいいと言われたんです。その投げ方が一番いいから、それを覚えた方がいいと。あの試合はカーブを投げて(いいフォームに)戻ったのかなと」

 坂本も「一つの可能性ですけど、カーブを投げてフォームが良くなったんじゃないか」と指摘し、安藤投手コーチも「それは(坂本)誠志郎とも話したんだよ。あのドローンとしたカーブは下半身の粘りと上半身のタイミングが合わないと投げられないから」と復調の要因に挙げた。

 序盤は上ずっていたボールが3回以降は低めに制球され、球威も上昇。本来のフォームを取り戻した村上はそう簡単に打たれない。「もともと誠志郎さんとカーブで組み立てていくと話していました。自分のフォーム的にも良かったし、相手のデータ的にもカーブは入っていなかったので両方うまくいきました」。80キロ台の“遅球”が導いた鮮やかな“復活劇”だった。(遠藤 礼)

 ○…村上は、智弁学園の2学年先輩・岡本和斬りを誓った。先発する16日の巨人戦(甲子園)に向け、甲子園球場ではキャッチボールやダッシュなどで汗を流した。15日時点で岡本和は打率・389(1位)、3本塁打(1位タイ)、12打点(1位)の打撃3部門でリーグトップ。昨季の対戦では4打数無安打に封じた大砲を、甲子園で迎え撃つ。今季2勝目を狙う25歳右腕は「仕事をさせなければ勝つ確率が上がる。高校時代から凄い打者。無意識に気合が入る」と静かに闘志を燃やした。

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