【内田雅也の追球】初回のバントが示す意識 単打主義を徹底し、打線の雰囲気は明らかに変わった

2024年07月28日 08:00

野球

【内田雅也の追球】初回のバントが示す意識 単打主義を徹底し、打線の雰囲気は明らかに変わった
初回無死一塁、中野は投犠打を決める Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神7ー3中日 ( 2024年7月27日    甲子園 )】 阪神監督・岡田彰布は勝利後の会見を終えると「今日は涼しかったなあ。汗かいてないわ」と言った。場内に吹いた浜風のように、気持ちの良い快勝だった。
 「早い回に点が取れるようになった」と序盤に先制できたのが大きい。この速攻を呼んだのがバントである。

 1回裏無死一塁で中野拓夢が前夜に続き投前に送りバントを決めた。前夜同様、初球を転がし、1死二塁をつくった。

 岡田は迷いなくバントを命じている。まずは走者を進める意識をチームに植えつけたいのだ。

 前日26日の試合前、オールスター明け後半戦を迎えるにあたり、選手たちに「もう一度つなぐ意識を持つようにしよう」と呼びかけていた。そして初回無死一塁で中野にバントを命じている。

 球宴前は初回のバントは使わずにやってきた。今季を見返すと、初回の犠打は4度目だ。開幕後しばらくして打線低調が明らかになってきた4月21日、中日戦(甲子園)、同24日のDeNA戦(横浜)と、いずれも無死一塁で中野が投前犠打を決めている。その後は前日まで3カ月間、初回犠打はなかったのだ。

 ボールが飛ばないといった声に岡田は「そうは思わん」と否定的だ。投手のレベルが上がったとみている。ともかく投高打低は間違いない。連打や長打は望めない。走者を進め、一打で還す。コツコツと「短打主義」でいこうというわけだ。

 1回裏はバントで送った直後に森下翔太が左前打で還した。3回裏には単打5本を集めてビッグイニングをつくった。

 この短打主義は岡田の野球でもある。前回監督当時、2007年9月7日の東京ドームでは巨人の7本塁打に対し、単打12本と桧山進次郎の代打決勝ソロで9―8で勝ったことがある。08年7月22日の甲子園では単打7本で巨人から4点差を逆転勝ちしている。

 7月27日と言えば、46年に藤村富美男が西宮球場での巨人戦の最中、ベンチ内で新聞紙に火をつけるという“事件”があった日である。「ダイナマイトに火がついた」と打線を鼓舞した。10日前にスポーツ紙で「ダイナマイト打線」とニックネームがついていた。

 今はバントが打線に火をつけている。岡田は「気分も雰囲気も変わった」と言った。阪神打線は生まれ変わったとみている。 =敬称略=
 (編集委員)

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