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【平尾誠二さん命日】16年前の約束に導かれ…阪神・木浪&坂本のメンタルトレーナーは被災地も駆け回る

2024年10月20日 11:00

野球

【平尾誠二さん命日】16年前の約束に導かれ…阪神・木浪&坂本のメンタルトレーナーは被災地も駆け回る
阪神・木浪聖也内野手(左)と筒井正浩さん(筒井正浩さん提供) Photo By 提供写真
 ミスターラグビー・平尾誠二さんにもらった言葉を胸に、スポーツ界に情熱を注ぐメンタルトレーナーがいる。筒井正浩さん(62)は、プロ野球・阪神の木浪聖也内野手、坂本誠志郎捕手を個人的にサポート。坂本を通じて知り合った木浪には、今季全試合で心理面のアドバイスをし、活躍を支えてきた。
 10月20日は、現役時代に華麗なステップでファンを魅了した日本代表元監督・平尾さんの命日。2016年に胆管細胞がんのため53歳で亡くなった恩人へ「誠二さんとの約束を忘れずにまっすぐ進んでいますと伝えたい。スポーツ大国ニッポンを一緒に創ろうと。その言葉をもらったから今の私がある」と感謝を口にした。

 平尾さんとの出会いは08年。講演会に感動し、「話をしてみたい」と意を決して控え室をノックしたことがきっかけだ。驚いたことに、見ず知らずの自分を部屋に招き入れてくれた。名刺を渡すと、載せていた肩書きに食いついてくれた。

 「メンタルコーチってなんですか!?」

 博学な平尾さんでもなじみがないほど、当時は、なり手が少ない職業だった。選手に考え方のレッスンをし、、パフォーマンス発揮を手助けする仕事だと伝えた。

 「絶対にこの道でメシを食ってください。本気で応援します」

 以後、講演のたびに控え室を訪れ、その都度、各界で名を馳せた著名な共演者を紹介してくれた。仕事にはつながらなくてもうれしかった。近寄りがたい芸能人のようなイメージは勝手な幻想だった。1歳下の人間・平尾誠二は、誰に対してもオープンで、情熱家で、ユーモアあふれる、男が惚れる男だった。

 当時、筒井さんは人生の岐路を迎えていた。会社員と並行して10年間学んだ心理学を生かそうと、安定した収入がある阪急電鉄の運転士を脱サラ。メンタルトレーナーとして歩み出したものの、貯金を食い潰す日々が続いた。追い込まれた状況が、平尾さんを突撃訪問する伏線になった。

 勇気を振り絞った一歩から人生は好転。履正社高校野球部のトレーナーに招かれ、活動の幅が広がった。現在は阪神の選手だけでなく、8月のパリ五輪で金メダルに輝いたレスリング女子76キロ級の鏡優翔も指導する。地道に成果を上げてきた。

 筒井さんにはもう一つ肩書きがある。一般社団法人「愛と感謝」の代表理事として災害ボランティアに尽力している。95年阪神淡路大震災で神戸市の生家が全壊したことが活動の発露。これまでに東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの被災地を回ってきた。今は、地震と豪雨の爪痕が残る石川県輪島市で汗を流している。

 「誠二さんに出会ったあのときに、動く勇気を学んだ。被災地のボランティア活動をしているのも、その勇気を学んだからですね」

 16年前、平尾さんからもらった「スポーツ大国ニッポンを創ろう」というパスは、楕円球のように不規則にバウンド。いつしか、スポーツ界だけでなく、被災地の人たちを励ます存在になっている。(阪神担当・倉世古 洋平)

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