フェイントに引っかかった尾川 “試しの右”は想定外――浜田剛史の目
2022年06月05日 09:48
格闘技
コーディナのパンチは決めにいったものではなく、当たればもうけものという右ストレートだったのではないか。お互いに調子の良い立ち上がりで、相手に打ってこさせないように試しに一発大きいのを振っておくことはよくある。空振りしてもすぐに手を戻せるようにバランスを崩すほどの打ち方ではなく、ガードの上を叩いてもよかったのだと思う。だが、打つ前に入れたボディーへのフェイントに尾川が引っかかり、左のガードが瞬間的に下がったところへまともに入ってしまった。フックではなくロングの真っすぐだったため、避ける軌道もタイミングもなかった。コーディナが一発で決めるような選手なら警戒もできたが、まさに想定外だった。
尾川のスタートはよかった。相手のリーチやスピードを1回に把握した上で、どの段階で懐へ踏み込むか見極めようとしていた矢先だった。踏み込んだら相手は打ってくるのか下がるのか、それともクリンチか、さらには揺さぶり方やロープへの詰め方などさまざまなコーディナ対策を用意していたが、出す前に終わってしまった。予期せぬことが起きるのがボクシングだが、残念のひと言だ。(元WBC世界スーパーライト級王者、帝拳ジム代表)