フェイントに引っかかった尾川 “試しの右”は想定外――浜田剛史の目

2022年06月05日 09:48

格闘技

フェイントに引っかかった尾川 “試しの右”は想定外――浜田剛史の目
2回、ダウンした尾川。KO負けを喫する(ロイター)
 【ボクシング・IBF世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦 ( 2022年6月4日    英ウェールズ・カーディフ )】 完全アウェーで初防衛を狙った王者・尾川堅一(34=帝拳)は2回1分15秒KO負けして王座から陥落した。地元出身で世界初挑戦の同級3位ジョゼフ・コーディナ(30=英国)の右ストレートを浴びてダウンし、立ち上がれなかった。尾川は12年8月以来約10年ぶりの黒星で、26勝18KO2敗1分け1無効試合。コーディナは15全全勝(9KO)。
 【浜田剛史の目】

 コーディナのパンチは決めにいったものではなく、当たればもうけものという右ストレートだったのではないか。お互いに調子の良い立ち上がりで、相手に打ってこさせないように試しに一発大きいのを振っておくことはよくある。空振りしてもすぐに手を戻せるようにバランスを崩すほどの打ち方ではなく、ガードの上を叩いてもよかったのだと思う。だが、打つ前に入れたボディーへのフェイントに尾川が引っかかり、左のガードが瞬間的に下がったところへまともに入ってしまった。フックではなくロングの真っすぐだったため、避ける軌道もタイミングもなかった。コーディナが一発で決めるような選手なら警戒もできたが、まさに想定外だった。

 尾川のスタートはよかった。相手のリーチやスピードを1回に把握した上で、どの段階で懐へ踏み込むか見極めようとしていた矢先だった。踏み込んだら相手は打ってくるのか下がるのか、それともクリンチか、さらには揺さぶり方やロープへの詰め方などさまざまなコーディナ対策を用意していたが、出す前に終わってしまった。予期せぬことが起きるのがボクシングだが、残念のひと言だ。(元WBC世界スーパーライト級王者、帝拳ジム代表)

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