金子達仁氏 「貧すれば鈍す」を増大させた伊東の幻のゴール オマーン戦で打破してほしい
2021年11月12日 07:00
サッカー
なぜこんなことになったのか。短期的に見れば、不可解すぎるゴールの取り消しが大きかった。
伊東の一撃がネットに突き刺さった瞬間、ベトナムの選手は仰ぎ、ベンチの韓国人監督も大きくのけぞっていた。言ってみれば、やられた側が完全に脱帽していたにもかかわらず、審判団はゴールを取り消すことを前提にしたとしか思えない粗(あら)探しを始めた。
そして、散々待たせた揚げ句の結論はノーゴール。こんな仕打ちを受ければ、どんなチームだって余裕を削り取られる。つまり、貧してしまう。
だが、ならば幻のゴールまでの日本は素晴らしかったのかといえば、必ずしもそうではなかった。危なげはなかったが、そのクオリティーはおよそW杯でベスト8を目指すチームのそれではなかった。というより、そもそもクオリティー自体に対するこだわりが薄れてしまっているようにも感じられた。
4試合を終えて2勝2敗という成績は、最終予選が始まる前にはあった選手たちの誇りや余裕を、ずいぶんと変質させてしまったらしい。
オマーンに手痛い1敗を喫したことで、選手たちは自らの油断を激しく責めたのだろう。それ自体は間違ったことではない。だが、責めすぎるがあまり、相手を呑(の)んでかかる姿勢までも捨て去ってしまった。
98年W杯で日本と戦ったアルゼンチンのパサレラ監督は、試合後「日本は我々を尊敬しすぎているようだった」と語ったが、それは、両国の歴史や力関係を考えれば仕方のないことでもあった。ところが、21年11月11日の日本代表は、自分たちよりはるか格下の相手を尊敬しすぎてしまった。
欧州や南米の予選に比べ、アジア予選のレベルは明らかに落ちる。ゆえに、本大会を考えれば結果だけでなく、世界に通じると選手たちが確信できる内容が必要だというのは、多くの人が思っていたことである。
この1―0は、W杯につながる勝利だろうか。試合内容は、鈍くなってしまった精神を再び高めてくれるものだっただろうか。
残念ながら、とてもそうは思えない。
選手の側からすれば、万が一にも本大会出場を逃すわけにはいかない、という強烈な重圧はあるだろう。見栄えなんかにこだわっていられない、という気持ちもわかる。だが、アジア予選程度の重圧で引っ込めてしまえるスタイルが、どうしてより激しさを増す本大会の舞台で貫けようか。
伊東の先制点を生んだのは、大迫のポストプレーと南野のクロスだった。いい仕事だった。ただ、それだけだった。以前の彼らが見せていたクオリティーに比べれば、正直、お話にならないレベルだった。
次の相手オマーンは、日本をここまで破壊した元凶でもある。鈍してしまった現況を打破するには、ある意味、最高の相手でもある。(スポーツライター)
おすすめテーマ
2021年11月12日のニュース
特集
サッカーのランキング
-
森保ジャパン トラブル乗り越え白星も…B組最下位ベトナム相手にわずか1点
-
城彰二氏 日本に厳しい結果、悪い流れ…どこかで大胆な手を打つ必要がある
-
伊東 救った千金V弾 右サイドのスピードスター、鮮やかカウンター
-
中田浩二氏 伊東の持ち味「スピード」が出たゴール
-
麻也 最終ライン冷静統率で無失点「我慢できたのは評価できる」
-
南野 正確クロスで2戦連続アシスト「個人的には良いコンディション」
-
田中 好パス供給でチャンス演出「勝ち点3が取れたのは一番の収穫」
-
大迫 ベテランの意地見せた 持ち前のキープ力で先制点の起点に
-
山根 右サイドバックでフル出場 得点絡まずも攻守に積極プレー
-
ベトナム ホームで初勝ち点ならず、攻撃不発で無得点…5戦全敗
-
サウジ 豪に満足の勝ち点1、首位守った 指揮官「素晴らしい結果」
-
豪州 2年ぶりホーム開催で決定力不足露呈、嘆きのアーノルド監督
-
韓国 UAEにPK弾で逃げ切り プレミアLで4得点、黄喜燦が存在感
-
J2長崎FW玉田が今季限りで引退 日本代表で16得点のスピードスター 12月上旬に会見
-
Bミュンヘン熊谷 フル出場もリヨンに苦杯 女子欧州CL1次L
-
ジーコ氏は鹿島指揮、ブッフバルト氏は浦和率い天皇杯&リーグ制覇、ストイコビッチ氏は名古屋で戴冠