ドイツもセットプレーコーチを採用 弾道測定器でキック精度向上 相手をかく乱も

2022年08月03日 06:30

サッカー

ドイツもセットプレーコーチを採用 弾道測定器でキック精度向上 相手をかく乱も
ドイツ代表のフリック監督(AP) Photo By AP
 【11・21開幕 カウントダウン・カタール 】 サッカーのW杯カタール大会(11月21日開幕)で日本と同じ1次リーグE組に入っているドイツも、日本と同様にセットプレーコーチを採用している。昨夏に就任したフリック監督が21年欧州選手権でデンマークの4強躍進を支えたマッズ・ブットゲライト氏を招へい。最初の8試合で総得点33のうち、セットプレーから6点を記録した。その後の5試合で加えた9点にセットプレーからの得点はなかったが、チームは改善に取り組んでいる。
 「セットプレーの得点が安物という考え方は理解できない」とブットゲライト氏。監督やチームによっては軽視されがちでキッカーの個人能力頼りになることもあるが、母国デンマークの強豪ミッティランで17年から専門コーチを務め、ステップアップしてきたスペシャリストは「チームワークが必要で素晴らしいもの」と訴える。

 セットプレーから得点を増やすことはもちろん、失点を減らすために攻守両面で選手のポジショニングや動きをチェック。トリッキーなプレーを考案して相手選手をかく乱することもある。また、デンマークのトラックマン社がゴルフ用に開発した弾道測定器をサッカー用にカスタマイズ。キックの打点やボールの軌道、速度、回転数を可視化してキッカーの理解促進と精度向上に取り組んできた。

 ドイツ代表では2―0で制した3月26日の親善試合イスラエル戦でCKとFKから得点しているが、指導者としてのハイライトはデンマーク代表のスタッフだった昨夏の欧州選手権だ。結果的に延長戦の末に1―2の逆転負けを喫したが、デンマークが準決勝でイングランドから決めた先制点は輝きを放つ。そこまで大会無失点だった難敵から得た前半30分のFKでFWダムスゴールがゴール左前約22メートルの位置から直接ゴール。精度が高いキックを周囲がサポートした結果だった。

 相手選手4人が立っていた壁のやや前方右脇にデンマークはいずれもDFのベステゴー(1メートル99)、ケアー(1メートル90)、クリステンセン(1メートル87)というチーム最長身選手3人を配置。両チームの選手が並んだ時には2つの壁の間には1人分のスペースがあったが、ダムスゴールがモーションに入ろうとすると3人が隙間を埋めるよう横に動き、相手GKピックフォードの視界をさえぎった。ボールの出どころが見えなかった守護神は反応が一瞬遅れ、伸ばした右手の薬指をかすめてボールはネットを揺らした。

 ブットゲライト氏は「それぞれの選手がミケル(ダムスゴール)の成功を手助けしようと責任を果たした。そのことが最大の喜びだった。練習でプランを立てディテールを話し合うサイドラインのコーチにはなれるが、ピッチで形にするのは選手たち」と振り返る。

 実は直前のプレーもデンマークのFKだった。ゴール右前約40メートルの位置からペナルティーエリア左に飛び込む選手に合わせる場面。デンマークは1カ所に集まった6人の選手が同時に異なる方向に散らばる不規則な動きを見せた。イングランドはDFショーがもみ合いの中で相手選手を倒し、ゴールに近い位置で再びFK。2つのセットプレーを積み重ねたデンマークの一撃は大会屈指のゴールと高く評価された。

 そんな実績があるスペシャリストに関し、フリック監督は「我々が取り組んでいることが成功を約束してくれることは、どの選手の目にも見えている。効率性は注目に値する」と語る。ドイツが優勝した14年W杯で自らコーチとしてセットプレーを担当していたこともあり、近年おろそかになっていた分野にあらためて注目。「エキスパートが選手を指導するのは常にいいことだ」と信頼を寄せる。

 絶対守護神のノイアーも「CKやサイドからのFKではどのようにポジションをとるか、どうボールに対して動いていくかが決定的になる。GKである僕にも重要なこと」と守備強化の側面から専門家の存在を歓迎する。

 「トップの選手は1%でもうまくなれることを探し求めている」とブットゲライト氏。試合を通じて必ず何回か機会が訪れるセットプレーから貪欲に1点を狙って失点を防ぐ。その時に備え、舞台裏で準備を進めている。

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