【槙野智章観戦記】ピッチ全体を生かした最先端のモロッコの戦術は日本の“お手本”に

2022年12月20日 05:20

サッカー

【槙野智章観戦記】ピッチ全体を生かした最先端のモロッコの戦術は日本の“お手本”に
4強入りを果たし「モロッコ旋風」を起こした Photo By スポニチ
 【槙野智章 ピッチサイド】決勝はアルゼンチンとフランスという最高のカードでしたが、予想をはるかに超える最高の試合になりました。フランスがボールを保持して一方的に攻めて、アルゼンチンが守ってカウンターを仕掛ける展開を予想していました。しかし良い意味で覆されました。アルゼンチンが優勝してメッシがMVP。多くのファンが望んだ結末になったのではないでしょうか。
 メッシとは同い年なんです。ただ、同じピッチで戦ったことはありません。ザッケローニ監督時代に日本代表が10年10月にアルゼンチンと親善試合を行い1―0で勝ちました。メッシは出場したのですが、僕は出場機会がありませんでした。

 当時と比べればドリブルの切れは落ちているかもしれないけど、やっぱり凄い。トップスピードでドリブルしながら細かなボールタッチで緩急をつけたり、相手を見て局面を変えられる能力がずぬけています。若い頃よりも周りを生かす場面も多く、プレーの幅が広がったと思います。同じ時代にサッカー選手としてプレーできたことが誇らしいです。

 今大会を総括すると、ロシア大会から守備ブロックの形成に進化が見られました。ゴール前に人数をかけて守るのではなく、ゴールを奪うための積極的な守備をするチームが多かった。日本やモロッコはその代表格です。

 最も印象に残っているチームはモロッコです。引いて守るではなく、攻撃を想定しながら守る。ボールを奪った後はドリブルで相手を剥がしたり、ピッチ全体を使って相手を走らせたり。相手が嫌がることをやってくる。流行の最先端を行く戦術だと感じました。

 そのモロッコの中心を担ったのがボランチのアムラバトです。守備範囲が広く、カウンターの危険を察知して芽を摘む。ビルドアップの際もドリブルで前に運ぶ能力が高く、相手が引いた時には精度の高いロングパスを前線に供給する。攻守に貢献度が大きかった。

 モロッコは前線にメッシ、エムバペ、クリスティアーノ・ロナウドのように一人で局面を打開してゴールを奪える選手がいるわけではない。しかし全員で規律を守り、どう守るのか、どう点を取るのかをピッチ上で選手たちが体現している。日本にも参考になるチームだと思います。

 決勝も含め今大会はドラマの多いW杯でした。これまで関心のなかった人たちもサッカーに夢中になっていると肌で感じています。この熱をJリーグにもつなげていきたいですね。(W杯ロシア大会日本代表、神戸DF)

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