【蹴トピ】配信と融合　7人制「キングス・リーグ」発起人ピケ氏の思い　26日から初の国際大会

2024年05月15日 06:00

サッカー

【蹴トピ】配信と融合　7人制「キングス・リーグ」発起人ピケ氏の思い　26日から初の国際大会 — 元スペイン代表でキングス・リーグ発起人のジャラール・ピケ氏 Photo By 提供写真

　独特なルールやデジタルを融合した新たなエンタメとしてスペインで話題沸騰中の7人制サッカー大会「キングス・リーグ」。発起人の元スペイン代表DFジェラール・ピケ氏（37）が本紙のインタビューに応じ、今月26日からメキシコで開催される初の国際大会「キングス・ワールドカップ」へ向け、その魅力や期待などを語った。　（取材・構成　垣内　一之）

　「一番の狙いはデジタルと従来のサッカーを融合させ、11人制になかったビデオゲームのような規則を組み込むことで、若い世代に興味を持ってもらうことが大きな目的だった」

　そんなピケ氏の思いが具現化されたのが、現役引退直後の22年11月に発足した7人制サッカー大会「キングス・リーグ」。ゲーム配信とリアルサッカーを融合させた新たなエンタメとして今、スペイン国内で話題を呼んでいる。

　リーグは2シーズン制で、計12チームによるリーグ戦を行い上位8チームがプレーオフで優勝を争う。各チームを率いるのは元アルゼンチン代表FWアグエロ氏といった往年のスター選手だけでなく、動画配信プラットフォームでゲーム実況などを行う人気ストリーマー（配信者）や、コンテンツクリエーターも不可欠な存在として君臨する。

　「11人制より短時間で行われ、ストリーマーを組み込んで行うことも大きなポイント。ストリーマーを組み込むことによって、彼らが持っている配信ツールでゲームは生配信される。それによって多くの観客を取り込めることが大きな魅力だ」

　ピッチは人工芝で11人制のハーフコートサイズ。選手交代は無制限で、さまざまな独自ルールも魅力の一つだ。

　「試合は20分ハーフの計40分。前半残り2分で大きなサイコロが投下されて、その数によって7人制が3対3、2対2、1対1にもなり得る。また後半残り2分では、ボールが白からオレンジに替わって、1点が2ゴール換算になることも大きなポイント」

　その他にも試合の展開をガラッと変えるシークレットカード制度を導入。「即PK獲得」、「相手選手を4分間退場させる」など5種類のカードを試合前に1枚引き、好きなタイミングで発動することができる。

　そういった斬新なルール導入について、ピケ氏は「配信を見たさまざまな方がリアクションをして、SNSなどに投稿することによって、試合が盛り上がる。そういうことが非常に大きなポイント」と強調する。

　この新たなエンタメがスペインでは多くの若者に刺さり、昨年3月にバルセロナの本拠地「カンプノウ」で行われた大会には、約9万2000人が来場。試合の様子はキングス・リーグの公式チャンネル（ユーザー130万人）ほか、各チームのオーナーのチャンネルでも配信され、最大同時接続数は約210万人、総再生回数は1000万回を超えたという。早くも一大イベントに成長を遂げた形だ。

　注目度アップもあり、今月26日から来月8日までメキシコではいよいよ初の国際大会「キングス・ワールドカップ」が開催される。参加32チームで、元イタリア代表FWトッティ氏ら往年のスターに加え、ブラジル代表FWネイマール（アルヒラル）や元コロンビア代表FWハメス・ロドリゲス（サンパウロ）ら現役選手も参戦予定。日本からはストリーマーの加藤純一氏がオーナーを務める「ムラッシュFC」が日本代表として出場する。

　1チームは13人構成で、10人目まではドラフトで選出。残り3選手はオーナーが独断で決められる。「日本からは今回が初参加。最高の13人を選出して準備に取り組んでもらっていると思う。選手たちの活躍はもちろん、代表がストリーマー（加藤氏）なので、どれだけキングス・ワールドカップについて日本で発信されるかも注目だ」とピケ氏。優勝賞金は100万ドル（約1億5600万円）。スペインでは11人制サッカーを脅かす人気を誇る7人制サッカーが、いよいよ日本でも脚光を浴びそうだ。

　◇ジェラール・ピケ　1987年2月2日生まれ、バルセロナ出身の37歳。バルセロナの下部組織で育ったが、04年7月に移籍したマンチェスターUでプロデビュー。06～07年のサラゴサへの期限付き移籍を経てバルセロナに復帰し、リーグ優勝9回、欧州CL制覇3度など数々のタイトルを獲得。22年11月にシーズン途中で現役を引退。スペイン代表は09年にデビューし10年W杯優勝、12年欧州選手権制覇に貢献。国際Aマッチは105試合5得点。1メートル95、85キロ。

　▽キングス・リーグ　22年11月に発足。ドラフト形式で各チーム10選手を獲得し、毎節ゲストとして元プロ選手や現役選手を加えることが可能。ゲスト枠では既に元ブラジル代表FWロナウジーニョ氏、ネイマールらが参戦。キックオフは自陣のゴールラインから一斉スタートし、センターサークルにあるボールを奪い合う。交代は無制限で、イエローカードは2分間、レッドカードは5分間の一時的な退場となる。ドローの場合、ピッチ中央からドリブルで持ち運び、5秒以内にシュートを放つPK戦で決着をつける。