宮本恒靖氏 元代表主将として不完全燃焼だった一戦への思い語る 12日トルコ代表と02年W杯以来の対戦
2023年09月10日 05:10
サッカー
「ミーティングや監督の様子がそれまでと違っていた。ロッカールームの雰囲気もいつもと違った緊張感で、そわそわしていた」
6月18日の宮城スタジアムは雨模様。それまで晴天でサムライブルー一色だったスタジアムには、ところどころでレインコートの白色が混じっていた。1次リーグ3試合とは何かが違った。
前半12分に失点。その後はボールを持つ時間が増えたが「最後の局面はやらせてくれないな、と。そのうちに苦し紛れのシュートが増えていった」。1点が遠く、トルシエ監督率いる日本代表のW杯は幕を閉じた。
「泣いている選手もいたけど、その気持ちにはならなかった。もっと良い大会にできたんじゃないか、と」
自身初のW杯は不完全燃焼に終わった。そして同時に次代への指標にもなった。「当時のトルコ代表も欧州各国でプレーしている選手が多かった。ゴール前での守備の強さはさすがだなと改めて感じました。自分自身を含めて、全体として個の能力を伸ばしていかないといけないと感じた大会でした」。国内組が大勢を占めていた時代に、より多くの選手が広い世界を目指す必要性を痛感した。
現在、海外リーグでプレーする日本人は150人以上。現代表でも26人中22人が海外組だ。宮本専務理事自身も07年1月から約2年間、オーストリアの名門ザルツブルクでプレー。先駆者がいて、続く者たちがいて、その中で結果を残して日本人の評価を少しずつ高めてきた。そして多くのサッカー少年が世界で戦うことを夢ではなく現実目標として捉えるようになった。
「トルコ代表の方が当時の立ち位置は上位だった。現在は日本代表もいろいろな大会を経て、欧州でプレーする選手も増えた。互角以上の戦いができる。20年間、日本サッカーが進んできた道が正しかったのかを確認できる良い機会になるのではないでしょうか」
▽02年W杯日韓大会・トルコ戦 西沢を1トップ、三都主をFW気味の高い位置に置く初システムで開始。連係ミスが目立ち、前半12分にCKからMFウミト・ダバラにゴールを許した。前半42分に三都主の放ったFKはゴールマウスの左上の角を直撃。FW西沢も果敢にシュートを放つなど、MF中田を中心に攻めたが、最後までゴールを割れずに0―1で敗戦した。
≪タレント輩出へ3つの鍵≫
協会No・3のポストに就く宮本専務理事はピッチ内だけではなく、日本サッカー界全体を見渡している。その一つがタレントの常時輩出で(1)安心してサッカーができる環境(2)露出の仕方(3)多くの選択肢を持てる社会の実現が鍵と口にする。
育成年代を伸ばすことは永遠のテーマとも言えるが、そのためには「正しい教育をして、環境を整える。パワハラなどがない社会をつくっていく必要がある」。またバスケットボールW杯は「10代の視聴者が多い統計が出ていた」と他競技の人気分布図にも注目。「Jリーグはもう少し上の年齢。下の年代にも見てもらうためにマーケットの幅を広げていきたい」と若年層へのアプローチも念頭に置く。そして「柴崎(鹿島)のように帰国する選手もいるし、(井手口)陽介(福岡)のように海外に出て、一度戻って、またチャレンジする選手がいても良い。いろんな道があって良い」。海外で活躍した実力者が帰国して、経験を還元。それを見た若手が育って海外にチャレンジするサイクルは理想的だ。
多角的に見ながら発展へ尽力する。選手として日本代表主将を務め、監督としてはG大阪で20年J1リーグ2位。ピッチ内で確かな手腕を発揮した宮本専務理事の今後に注目が集まる。
◇宮本 恒靖(みやもと・つねやす)1977年(昭52)2月7日生まれ、大阪府出身の46歳。現役時代はG大阪、ザルツブルク(オーストリア)、神戸でプレー。11年引退。00年シドニー五輪、02年W杯日韓大会、06年W杯ドイツ大会出場。日本代表通算71試合3得点。18~21年はG大阪監督を務めた。今年2月に協会専務理事に就任。
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