Jシーズン移行 大卒選手のプロ入り早期化を懸念 流通経大・中野監督「現状は誰かが悪者になる」
2023年12月15日 04:47
サッカー
大学サッカー界からは例年、J1からJ3まで全国で100人前後がプロ入りする。秋にドラフト会議がある野球と違い、サッカーの新人獲得は自由競争で、加入内定をいつでも発表できる。
全体の傾向として、内定時期が早期化している。その中で大学卒業を待たずにクラブと契約し、一足早くキャリアを始める選手が目立つ。少し前ではDF長友佑都やDF室屋成(ともに明大→FC東京)、FW武藤嘉紀(慶大→FC東京)が代表例。近年では日本代表で活躍中のFW上田綺世(法大→鹿島)や、DF角田涼太朗(筑波大→横浜)らがいる。
現状はトップ中のトップ選手が卒業に必要な単位を揃え、周囲の十分な理解を得て例外的に実現している。しかしJリーグのシーズンが夏開幕になると、大学卒業後ではシーズン途中となり定位置確保が難しいと考え、リーグ戦や全国大会の出場を断念して早期退部し、場合によっては大学を中退してでも、4年夏の開幕に合わせた加入を希望する選手が急増するのでは、と中野氏は懸念する。
「サッカーだけ全国で100人近い選手が部や大学をやめるという現象が続くと、社会問題になりかねない。この辺のルール作りを整備しないと、選手が批判されたり、金儲けのために選手をそそのかす代理人、卒業を待てないプロクラブ側、それを阻止しようと圧力を掛ける大学側、誰かしらが悪者になる」
中野氏は「プロに行く人数はごくわずか。プロに合わせた大学のシーズン移行は今のところ考えにくい」とした上で「原則としては大学の12月の大学選手権、シーズンの終わりまでプレーすべき」と考える。「それでもどうしても評価が高く、クラブが出場を確約するような、限りなくそういうレベルなら行けばいい。ただし特別指定選手のような形ではなく、大学側に違約金のようなものを支払う方法が整理がつくと思う」と提案する。「大学も学費や寮費を一部免除したり、選手育成にもお金が掛かっている。クラブ側は本当に必要な選手なら、他クラブの選手や外国籍選手と同じようにお金を払ってでも取るのではないか」とした。
ウインターブレイクでの合流では新人が定位置争いで後手を踏むという考え方にも、中野氏は懐疑的だ。「Jクラブで最初から全試合フルに出られるようなレベルの選手はそういない。開幕からいるか途中から入るかで、ポジションが取れないというものではないと思う。どの時期に入っても、実力でポジションを取ればいい」。競争は可能と考える。
中野氏の教え子である守田や筑波大卒のMF三笘薫ら、世界で活躍する大卒選手が多くなった。シーズン移行がこの流れに与える影響は、中野氏にも予測がつかないという。「三笘選手が仮に半年早くプロを始めていたとして、同じタイミングで現在の活躍ができたかは誰にも分からない。4年間やりきったからこその現在ともいえるし、早く始めても同じだったかもしれない」。大学サッカーから世界へ―。中野氏の希望と情熱は変わらない。
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