被爆から79年 広島原爆の日 核抑止論台頭で廃絶に逆行 核兵器禁止条約への参加要請も首相は否定的

2024年08月07日 05:30

社会

被爆から79年 広島原爆の日 核抑止論台頭で廃絶に逆行 核兵器禁止条約への参加要請も首相は否定的
原爆投下から79年の「原爆の日」となり、広島市の平和記念公園で開催された平和記念式典。手前右は死没者名簿を原爆慰霊碑に奉納する松井一実市長 Photo By 共同
 広島は6日、戦後79年の原爆の日を迎えた。ロシアのウクライナ侵攻は続き、中東情勢も緊迫化。国際社会で核抑止論が強まり、核兵器廃絶に逆行する動きが台頭している。来年は被爆80年。高齢化が進む被爆者は今年も政府に核兵器禁止条約への参加を求めたが、岸田文雄首相は否定的な態度を崩さなかった。
 松井一実広島市長は平和宣言で、来年の核禁条約第3回締約国会議にオブザーバー参加し、締約国となるよう政府に要請。被爆者団体の代表らも平和記念式典後に広島市内で首相と面会し、改めて条約への参加を求めた。

 一方、式典のあいさつで昨年同様、条約に言及しなかった岸田首相は被爆者に対しても「核のない世界に向けて前進したい」と述べるにとどめた。面会後、広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之理事長(82)は「日本の姿勢は全く後ろ向きだ」と嘆いた。

 国際情勢も核廃絶を目指す流れに影を落とす。ウクライナ侵攻から2年以上たつが、停戦の見通しは立たない。ロシアは核使用の脅しを繰り返している。中東でもイスラエルがパレスチナ自治区ガザを攻撃。イスラム組織ハマスの最高指導者暗殺でイランとイスラエルの関係が緊迫している。

 東アジアでは、韓国との対決姿勢を鮮明にする北朝鮮や軍拡を進める中国をにらみ、日米両政府は7月、核抑止力を含む「拡大抑止」の強化に合意。米国の核兵器への依存を強めている。

 広島県の湯崎英彦知事は式典で「大国が公然と国際法違反の侵攻や力による現状変更を試みる」と批判した。

 被爆者健康手帳を持つ全世界の被爆者は10万6825人で平均年齢は85・58歳(今年3月末時点)。体験の継承が課題となっている。

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