父は物理教師 女子バド23歳エース奥原の“解” のぞみ×言葉=希望の金
2019年02月26日 11:00
バドミントン
「バドミントンに集中できています。課題を克服しながらプレーも良くなってる。楽しくて仕方がないです」
――これまでは代表の活動だけで年間250日を超えていた。東京五輪を目指す上で自分のペースでやりたいという判断で転向を決めたのですか?
「年に2回ほど国内の試合がある。海外の選手はその期間に練習に取り組む。これまでは企業に所属して“恩返し”という部分で国内戦に臨んでいたんですけど、もどかしかった。個人戦に全力を注ぎたくて決めました」
――忙しすぎて時間もない感じですね。
「1年で何回メークするかなという感じ。取材でメークをしてもらうとテンションが上がりますね(笑い)」
――ほぼスッピンとは、うらやましすぎます(笑い)。現在の生活は?
「週6日練習。コーチが羽根を打つ感覚を大事にしていて、コートの中で体力をつける練習をしている。身長が低いので、人より動かないといけない。少しずつ思い描いた軌道とかスピードが出せるようになってます」
――どういうプレーを見せたい?
「持ち味である粘りやレシーブ。リオ五輪が終わってから取り組んでいる攻撃的なディフェンス。相手を誘いカウンターで攻撃する。レシーブは去年から質が落ちてきていたので今やっています」
――コートでは一歩早めに動くことを心掛けていますか?
「人よりも足をとにかく動かす。シャトルの下に足を運んだ方が良い体勢で打てる。コントロールもいいし、相手にもプレッシャーがかかる。シャトルの下にどれだけ入れるか、ですね」
――自身のことを客観的に分析していますか?
「いろんなケガも乗り越えてきた。体のことを含め自分がどうしたいのかという声を聞けるようになってます」
――試合のルーティンは?
「思ったことを口に出してつぶやくと頭が整理できる。最近は相手や風向き、戦術をコートで確認します」
――筋肉も凄いですね。
「右足で踏み込むので右の太腿の方が太い。右手ばかり使うので腕の太さが違います。洋服も左足は入るけど右足が入らないとかありますね(笑い)」
――不戦勝で獲得したことも踏まえ、リオ五輪の銅メダルはどう捉えてますか?
「順位決定戦で勝って銅メダルなら満足感は得られたと思います。準決勝で思い通りに行かず自分のプレーができずに終わった。その課題が全部東京につながると思ってます」
――東京五輪についてはいかがですか?
「金メダルを獲って頂点に立つ。リオ五輪でタカマツさんが金メダルを獲って会場で君が代が流れた時に鳥肌が立った。次こそ、自分が日の丸を掲げたい。東京を感動する場にできたらと思うとワクワクします」
――力強い言葉が気持ちいい!話を聞いていると今年もすでに2カ月過ぎちゃいましたが、自分を改めたいと思います(笑い)。
――バドミントンをするにあたり参考にしているものは?
「競技で頭を使うので普段は何も考えない。参考にしているものもないですね。高校では精神的に疲れていた時期があって、集中力を高めるため、時間を忘れるくらい大好きな数学に取り組んだことがありました」
――時間を忘れるくらい…私なら5秒くらいで時計を見ちゃいますよ(笑い)。
「最近もツイッターで数学の問題を見つけて解きました。いろいろな方法がありますし、過程が楽しい。連立方程式や証明が好き」
――集中力アップ作戦は成功しました?
「全く…駄目(笑い)。好きなことをポジティブにやるのが大切だと気付いた」
――物理教師のお父さんは厳格でしたか?
「“迷ったら厳しい道を行け”という教えでした。厳しいし細かかった。練習始めの1球目。そのミスがスタートのミスにつながる。ちょっとした意識の変化の大切さも父に教わりました」
――今年の目標は?
「年末年始に実家に帰って貼り紙に目標を書くんですけど“全力で継続”としました。書くとやっぱり自分の中で整理される」
――書くということは当たり前ですけど自分の責任になる。私ならちょっと下の目標設定にしますね。あぁ、自分がもう何だか嫌になってきた…(笑い)。ところで休みは何をしていますか?
「初の一人暮らしで雑貨屋さんを巡ったりしてます。買い物はめっちゃ迷います。絶対に後悔したくないので(笑い)」
――好きな料理は?
「お米がおいしい。海外から帰ってきて食べたいものを聞かれたら土鍋のご飯ですね」
――SNSには牛タン、うなぎ、お寿司が三種の神器のように載っていますね。好きな気持ちが伝わりますよ。
「ハハハハ、それも大好きです。スイーツも。抹茶とティラミス、チーズケーキ、ショートケーキもいいなぁ…。今はあまり量を食べられない。“量より質や”と思ってます」
――髪形もショートにしたんですね。
「憧れていたんですけど、切るのは勇気がいる。なので絶対にしないと駄目な状況をつくった。ブリーチしてパーマをかけてキシキシに。1、2年くらい準備期間があった」
――髪を痛めつけ気持ちから入る。プライベートも戦術を駆使していますね(笑い)。
◆奧原 希望(おくはら・のぞみ)1995年(平7)3月13日生まれ、長野県大町市出身の23歳。小学2年でバドミントンをはじめ2006年にアジアユースジャパン優勝。11年に史上最年少の16歳8カ月で全日本総合選手権を制する。15年にはスーパーシリーズファイナルで優勝。16年のリオ五輪女子シングルスで銅メダルに輝く。18年末に日本ユニシスを退社。19年1月からプロとして活動。1メートル56。
【取材後記】東京で頂点に立つという目標も、周りのことを気にせず“スカッ”と話す。言葉一つ一つに結果を出してきた強さが見えました。
プロに転向して充実していることも伝わってきました。私自身もフリーアナになったことで「何を選択するか」に責任を持つようになりました。大切なのは“自分基準”。代表の重圧もある中、最良の選択をされたのでしょう。
お父さんの“あえて厳しい道を選ぶ”との教えも守りながら、大きなケガを何度も乗り越えたことで自身の体とも対話できるようになった。その柔軟性を身に付けたのも大きいですね。残り1年半。あとは「全部負けたくない」という思いを有言実行あるのみです。(加藤 綾子)
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