ラグビー日本代表 最高傑作15年モデル凌駕、唯一無二の戦闘服で歴史的3勝の結果も超えろ
2019年07月09日 10:00
ラグビー
一番最初に行ったのが、15年モデルに関する聞き取り調査。だが選手が異口同音に発するのは、「ポジティブな意見ばかりだった」という。課題を指摘されれば、克服のために知恵を絞って技術を磨く。しかし結果が出たこともあり、ネガティブな意見は極めて少なかった。「15年モデルを凌駕(りょうが)するしかないと思ってスタートした」
W杯単位では99年大会から日本代表ジャージーを手掛けてきた同社。4年ごとに最高のジャージーを開発してきた歴史の中でも、「ジャパンウエー」をコンセプトにした15年モデルは白眉(はくび)だった。4種類の素材を使用したハイブリッド構造、耐久性と軽量性の両立、初となる2種類のフィッティングパターンの製作など。それら全てを19年モデルでは超える。課題が見えなかったスタートで、石塚氏は「FWとバックスで求めることが違うことを改めて知った」ことに光明を見いだした。
4年前は同一素材でFW第1列とその他のポジション用のジャージーを製作。だが「シルエットだけでは(要望を)カバーしきれないのでは」との疑問から、FW用とバックス用、異なる素材の開発が始まった。15年モデルの生地を開発した和歌山県のメーカーに加え、FW用には新たに福井県のメーカーに開発を要請。約2年で50種類の素材をテストし、それぞれの要望を満たす2種類を選び抜いた。1チームのジャージーではない。それは3チーム分を開発する、膨大な作業だった。
そうした難作業を乗り越えられた要因が、同社の親会社であるゴールドウインが17年11月に富山県小矢部市にオープンした研究開発拠点「テック・ラボ」だという。同社総合企画統括本部の坪井修氏は、この拠点の最大の強みを「ラボの2階に工場があり、あらゆる製品を作っている。これは他のメーカーさんにはないこと」と語る。他競技用に開発した技術を、横断的にラグビージャージーにも取り入れられたわけだ。
例えば伝統的にアウトドア商品に強みを持ってきたゴ社が磨いてきた技術の一つが、汗処理の方法だ。「冬山では汗が命取り。冷えれば死につながる。速乾性を高めたり、汗冷えしないような技術は積極的に取り入れた」と石塚氏。縫い目をフラットにし、着用感をアップさせる特殊な技術も、元々はコンプレッションウエア用に開発された技術。まさに技術の粋を集めたからこそ、メード・イン・ジャパンと堂々胸を張れる傑作が完成した。
W杯でカンタベリーブランドを着用するのは日本を含めて7チームの見込み。3Dのエンブレムなどは各国共通だが、メード・イン・ジャパンは日本代表のみが使用する。唯一無二のジャージーを着たジャパンは、4年前の結果を超えられるか。石塚氏らにとっても、心落ち着けない44日間が迫ってくる。
《差し色に富士山御来光の金》デザイン面では伝統の紅白の段柄を踏襲しつつ、かぶとの前立てをモチーフに鋭角ラインのストライプでスピード感、躍動感、力強さを表現。差し色として富士山の御来光を表現した黄金色を初めて取り入れた。そして日本伝統の吉祥文様の和柄の地紋を、生地全体に施したのが最大の特徴。武士道の精神を表現するジャージーとなった。
《各国代表も斬新デザイン》各国代表もW杯を前にジャージーをリニューアルしている。3連覇を目指すニュージーランド(アディダス)は山本耀司氏がデザインを担当。シダ(シルバーファーン)の模様が全体に施された、かつてない斬新なデザインとなっている。オーストラリアと南アフリカはアシックスが開発。アンストッパブル(勢いを止められない)をテーマに、4年前から機能面でも大幅に向上した。イングランド(カンタベリー)も高温多湿な日本の気候に対応するため、機能面が向上。ナミビア、トンガはミズノが提供するなど、開発競争も熾烈(しれつ)だ。
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