データで見る八村の第16戦 ブロックショット2回の意味 「点」ではなく「線」の守備
2019年11月28日 15:28
バスケット
このプレーで八村は最初からルビオをマークしていたわけではない。マッチアップしていたフォワードのダリオ・シャーリッチ(25)がルビオのためのスクリーンに入るやいなや、八村は一歩引いて構えてルビオのドライブに備えていた。ルビオは右サイドからドリブル4回でシュートまで持っていくが、八村は2歩目から対応。体を寄せたためにルビオにはシュートを放つ“空間”がなくなり、右足ステップで右手というアンバランスなレイアップとなった。
八村は左手を伸ばしてルビオのシュートを阻止。バックサイドからのレイアップとなったこのプレーで、八村の左手がボールに接触していたかどうかは微妙だが、リングに向かうボールの軌道をすべてつぶしていたことだけは確かだ。
2回目は第2Qの7分34秒。今度は213センチのフランク・カミンスキー(26)がフリースロー・レーン付近からインサイドに飛び込んで放ったゴール下のシュートを背後から右手ではたき落としたプレーだった。直後にシャーリッチにこぼれ球を拾われてシュートを決められてしまうが、サンズが意図したオフェンスは崩していた。
ここでも八村はカミンスキーとマッチアップしていたわけではない。ウィザーズのセンター、トーマス・ブライアント(23)がカミンスキーのスクリーンを利用してタテに突っ込んできたルビオに反応したために、カバーディフェンスに入った結果のブロックだった。このとき本来マークしていたシャーリッチは右のウイングにいた。しかし映像で見る限り、八村はトップでルビオが最初のドリブルをついた段階で、右足を「ルビオ・サイド」となる右側に20センチほど動かしている。つまり相手のプレーを読んでいたとみられる微妙な動きを見せ、これが最終的にカミンスキーへのブロックにもつながった。
ウィザーズは平均得点こそリーグ3位(118・1)だが、失点(120・1)は29位、リバウンド(42・3)とブロックショット(4・1)はともに26位と、ディフェンス面での成績は芳しくない。
八村はゴンザガ大に在籍していた昨季37試合でブロックショットの回数は27。1試合で1回あるかないかの成績で、相手のシュートをはたき落とす役目は、グリズリーズにドラフト全体21番目に指名されたブランドン・クラーク(23=昨季は1試合平均2・6回)の役目だった。
しかしいざウィザーズに入ってみるとクラークのような身体能力優れたディフェンダーがいない。それはつまり今度は自分がウィザーズ版のクラークにならなくてはいけないことを意味している。
3点シュートという武器がないために、追う展開になると八村のプレータイムは減ってしまうが、サンズ戦は第3Q途中で最大21点をリードするという展開だった。しかし第4Q終盤で猛追されて一時は4点差。それでもスコット・ブルックス監督(54)はこのクオーターの開始4分でベンチに下げていた八村を137―130で迎えた残り35秒にコートに戻した。指揮官は、チームが最も苦手にしているブロックショットを2回記録したルーキーに守りで“最後の締め”を託したのだと思う。
八村のNBAでのブロックショットは16試合でまだ3回。ジョージア出身の新人で、ドラフト全体18番目に指名されているペイサーズのセンター、ゴーガ・ビターゼ(20)は平均16・1分というプレータイムですでに18回のブロックショット(12試合)をマークしていることを考えると十分とは言えない成績だろう。しかしビターゼはジョージア代表、さらに昨季在籍したモンテネグロのチームでも「ショット・ブロッカー」として活躍してきたセンターだけに、今まであった能力を発揮しているにすぎない。
その一方で八村は昨季までなかったものを体で示そうとする意志が見え隠れしている。ビターゼと違うのは相手のプレーを「点」ではなく「線」で読み切らないとブロックショットまでにたどりつけないことかもしれないが、それでもサンズ戦で何かをつかんだはず。次のロサンゼルス遠征では、レイカーズのレブロン・ジェームズ(34)、アンソニー・デービス(26)、クリッパーズのカワイ・レナード(28)、ポール・ジョージ(29)というリーグ屈指のフォワード陣と対決するが、この中の誰かのシュートをぜひ1本でもはたき落としてもらいたいと思う。(高柳 昌弥)
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