帰って来たかませ犬ぶちょー。愛と悲しみのトリノGPファイナル

2019年12月17日 08:00

フィギュアスケート

帰って来たかませ犬ぶちょー。愛と悲しみのトリノGPファイナル
<GPファイナル男子フリー>7日、早朝にブリアンコーチと笑顔で会場入りする羽生結弦選手(撮影・小海途良幹) Photo By スポニチ
 【長久保豊の撮ってもいい?話】トリノの朝は早い。でも小海途カメラマンの朝はもっと早い。GPファイナルのフリー当日、朝7時に設定された練習時間も凄まじいが5時に現場到着の彼もまた凄まじい。ちなみにプレスルームのオープンは午前6時。1時間とはいえまだ夜も明けきらない氷点下の寒空、カメラを肩に植え込みの陰にいる。もはや修行。私は、といえば6時ちょっと前に到着して「いやあ、まだ誰れも来てないかと思ってあたりを一周してきた」とウソをつく。これも管理職の老獪なテクニックだ。記者2人、カメラマン2人からなるスポニチ・フィギュア部の面々。早朝から何を狙っていたかといえば会場入りするブリアンコーチと羽生結弦選手のツーショットである。パスポートの盗難でトリノ入りが遅れていたブリアンコーチ合流の知らせは前日の夕方にファンたちのツイッターからもたらされた。しかも会場内の写真入りだ。
 「白いダウンだ。白いダウンジャケットを探せ!」。指令は飛んだが宿舎に戻ったあとらしく無駄足に終わった。誤解なきように言っておくが、「入り待ち」していたところで試合当日の選手やコーチに話しかけたりはしない。カメラのストロボを光らせたりはしない。会場入りを確認するだけである。それなのに集まってしまった4人。神・小海途、ドキュメント職人・大和、25行の魔術師・杉本、そしてぶちょーの私である。神と職人はまだしも、魔術師とぶちょーはいらないと思う。

 で、神と称される小海途である。とにかくもてる。プレスルームの彼の席のそばには、どこの試合会場でも同じカナダ人のおばさまカメラマンが座っている。「日本人カメラマンには嫌いな人もいるけど彼はナイスガイだと思うの」とほおを赤らめる。私とは7年来の犬猿の仲のおばちゃまである。

 「神のような写真が撮りたくて…」。目に涙とハートマークを宿らせて懺悔したのはプレスルームでボランティアとして働く上海出身の留学生である。「こっそりカメラの設定をメモしてしまった」と言う。そんなの露出補正ダイヤルをグイッと+2段ほど捻じればOKと言おうと思ったがやめた。「こいつは初めてフィギュア取材行かせたときには上半身のガッツポーズしか撮って来なかったんですぜ、お嬢さん」と言ってやろうかと思ったがやめといてあげた。「ここにサインを」と神にサインを求めるが「ぶちょーもしてもいいです」ときた。まさかの「も(too)」2連発。私がムッとするより先にカナダのおばちゃまはこの上海っ子と神とのフレンドリートークが気に触ったらしく、ガチャンと筆記具を床に落とした。怖いね。

 スポニチフィギュアスケート部はこうした小海途人気に乗っかるべく、もとい、高まるフィギュアスケート情報への読者のニーズにこたえるべく、部の垣根を越えて集まった有志の集団である。ドキュメント職人・大和が分刻みでスケーターに加え、プーさんのティッシュケースの動向まで追えば、杉本が魔術のようなスピードで原稿を仕立て上げる。19日からの全日本選手権には大阪本社の刺客・倉世古も加入、熱い取材が繰り広げられそうである。(スチールカメラは1社1名という厳しい掟があるのでぶちょーはお休み)。

 あの日の朝のトリノ。ブリアンコーチと羽生選手は連れ立って神のレンズの前を笑顔で通過した。「そういえば御社の神、スケートカナダでも羽生さんに話しかけられていたな。笑顔で」。と他社の記者からご注進があった。

 ガッシャ~ン。おっと、最近の筆記具はよく落ちる。怖いね。(ぶちょー)

◆長久保豊(ながくぼ・ゆたか) 1962年2月生まれ。前スポニチ東京本社写真部長、現編集委員だが寂しいので「ぶちょー」と名乗っている。まだ会社からは怒られていない。

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