福島から聖火リレースタート 現地ルポ、“静かな応援”もランナー周囲だけ密

2021年03月26日 05:30

五輪

福島から聖火リレースタート 現地ルポ、“静かな応援”もランナー周囲だけ密
聖火のトーチを掲げスタートする2011年サッカー女子W杯で優勝した「なでしこジャパン」のメンバー Photo By 代表撮影
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期となっていた東京五輪の聖火リレーが25日、福島県からスタートした。11年サッカー女子W杯で初優勝し、東日本大震災に見舞われた日本を勇気づけた「なでしこジャパン」のメンバーが第1走者としてJヴィレッジ(楢葉町、広野町)を出発。約1万人のランナーによる121日間のリレーは全47都道府県を巡る。第1日の模様をスポニチ本紙・中出健太郎スポーツ部専門委員が現地からルポした。
 出発式典に出席した関係者は約160人。4000人収容のJヴィレッジの全天候型練習場は、ガランとしていた。郡山市の小中学生が披露した「花は咲く」の合唱。もっと多くの人々の前で歌いたかっただろう。その中で「日の丸」「福島からスタートする喜びの思い」と説明した丸川珠代五輪相の真っ赤な衣装が浮いて見えた。

 ヒヤリとしたのは、なでしこジャパンのメンバーがスタートした時だ。会場の一角で立ち見を強いられ、セレモニーや走行中の移動不可だった報道陣がコース脇へ殺到。元々人数が制限され、混乱にはならなかったが、ランナーの表情をよく見たい、自分のスマホで撮りたい(会場内は代表撮影)という衝動は誰にでもある。これが大勢の観覧客がいる公道で起きたら…。大会組織委員会はコロナ対策の「密集状態回避」で事前告知や沿道への呼び掛けを挙げているが、急な殺到に対応できるのか気になった。

 第3区間の広野町では、原発事故で一度は故郷を離れたものの現在は地元に戻り、高校に通う陸上部女子選手の走行に出会った。後輩たちに見守られ、鉄道の跨線橋(こせんきょう)を上って下りる姿に思わず拍手を送った。だが、先導するスポンサー車両が大音量で音楽を流し、応援隊のような関係者が曲に乗って踊る姿には違和感を覚えた。人もまばらな走行区間で、警備員、関係者、ガードランナーらが聖火ランナーを取り囲んだ隊列だけが“お祭り密状態”。ある区間ではマスクをしていない者もおり、地元から不快感を示す声も出た。

 初日を見る限り、拍手を主体とする“静かな応援”は浸透してきている。みんなが行動規範を守れば安全に実施できるとも思った。だが、市街地で密状態が散見されても「特段報告がなかった」と返答するなど、事態対応には甘さが見られる。コロナ対策を含む安全性をアピールし、国民に五輪開催の理解を得るはずの聖火リレー。残り120日間、緊張を緩めることはできない。

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