内村「僕が見せられる夢はここまで」 30秒で散った3大会連続金の夢

2021年07月25日 05:30

体操

内村「僕が見せられる夢はここまで」 30秒で散った3大会連続金の夢
予選敗退した内村(AP) Photo By AP
 【東京五輪第2日 体操男子予選 ( 2021年7月24日    有明体操競技場 )】 キングの夢は30秒で散った。男子予選が行われ、種目別鉄棒の内村航平(32=ジョイカル)はH難度「ブレトシュナイダー」などの離れ技を決めたものの、中盤のひねり技で落下。13.866点で上位8人による決勝に進めず、3大会連続の金メダルに届かなかった。
 声援なき無観客の会場で、その音は確かに聞こえた。関係者やメディアが漏らした、小さな悲鳴とため息。演技開始から30秒後、ひねり技で落下し、内村がマットに叩きつけられた。その瞬間、3大会連続金メダルへの挑戦が終わった。

 「感想も何もない。“何やってんだバカ”って感じ」
 H難度「ブレトシュナイダー」など3つの離れ技を決めた後に悪夢は待っていた。中盤のひねり技は21日の会場練習でも落下。修正したはずだった。調整は順調なはずだった。それでもなお、ミスが出たことで痛感した。

 「練習したことをそのまま出せる能力がないんだなって。大舞台になればなるほど出せていた印象だけど、もう出せない」
 鉄棒を終えるとサブアリーナで着替えを済ませ、再び会場へ。失意を抱えたまま、奮闘を続ける日本のチームメートを見守った。

 「世界の体操界を引っ張っていける選手がそろっている。もういらないじゃんと思いながら見ていた。僕が見せられる夢はここまでなんじゃないかな」

 個人総合で12年ロンドン、16年リオの五輪制覇を含め世界大会で前人未到の6連覇を達成。16年12月に日本初のプロとなって以降、逆風の連続だった。17年世界選手権は予選で左足を痛めて棄権。19年全日本選手権は予選落ちを喫した。

 両肩痛は深刻で100本以上、注射を打っても完治には程遠かった。20年2月、自身の美学だった個人総合に別れを告げ、鉄棒に専念することを決めた。「目指せることが奇跡」とした、TOKYOまでの道のりに後悔はない。

 「決断は間違っていなかった。今も個人総合をやっていたら五輪に出られていない。体操を嫌いになって、どっかに行っていたと思う」

  大ベテランの32歳。10月の世界選手権(北九州)の代表に入る可能性もあるが、引き際についても言及した。

 「いつ引退するかとか特に考えていない。レスリングの伊調さんも“引退します”と言っていないし。形として引退しているみたいになっていても、引退宣言をする必要があるのかなって」

 終始、穏やかな表情だったのは、3歳で始めた体操の奥深さを知ったから。

 「失敗したことのない技で失敗するなんて、面白さしかない。知っていないことがない状態が“極めている”ってことだと思う。まだ、知れてないだろうな」

 黄金のキャリアは永遠に色あせず、キングの探求の旅はこれからも続く。

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