トライアスロン・宇田「何があっても諦めない」不屈の銀メダル 日本勢初の表彰台

2021年08月29日 05:30

トライアスロン

トライアスロン・宇田「何があっても諦めない」不屈の銀メダル 日本勢初の表彰台
2位でゴールし、喜びを爆発させる宇田(撮影・坂田 高浩) Photo By スポニチ
 【東京パラリンピック第5日・トライアスロン ( 2021年8月28日    お台場海浜公園 )】 運動機能障がいPTS4男子で初出場の宇田秀生(34=NTT東日本・NTT西日本)が1時間3分45秒で銀メダルを獲得した。16年リオデジャネイロ大会から実施されたトライアスロンでは日本勢初の表彰台。視覚障がい男子の米岡聡(35=三井住友海上)も銅メダルで続いた。運動機能障がいPTS2女子の秦由加子(40=キヤノンマーケティングジャパン・マーズフラッグ・ブリヂストン)は6位だった。
 残された左手で日の丸を握りしめながら、ゴール前最後の直線を万感の思いで駆けた。ガッツポーズしながらフィニッシュした宇田は、崩れ落ちて人目もはばからず号泣。「いろいろな気持ちが込み上げてきて、こらえるのにいっぱいいっぱいだった。凄く幸せなストレートでした」

 苦手とするスイムは8番手と出遅れたが、残る2種目が見せ場だった。「バイク、ランは凄く自信があるので見ていただきたい」と宣言していた通り、バイクで巻き返して3番手でラン(5キロ)に入ると、2位との約30秒の差を2キロ付近で逆転。「何があっても諦めないという気持ちで、とにかく一生懸命走りました」と必死に前を追った。

 レースで見せた不屈の精神こそ、宇田の人生だ。13年5月。勤めていた建設会社で利き手の右腕をベルトコンベヤーのローラーに挟まれる事故に遭い、肩から下を切断。おなかに第1子を宿した妻・亜紀さんとの結婚から、わずか5日後のことだった。どん底に突き落とされながら、妻の「2人一緒だから何とかなるよ」の言葉に支えられ、入院中には「パラリンピックに出られるかな」と話すまで気持ちを持ち直した。

 リハビリの一環で水泳を始め、トライアスロンと出合った。大学卒業まで取り組んだサッカーでは県代表に選抜された運動神経の持ち主。持ち前の脚力を生かし、デビューから2戦目の15年アジア選手権でいきなり優勝した。東京五輪を目指す健常者のトップ選手と合宿を行うなど努力を重ね、「僕は障がいを負っているけど、アスリートとして見てもらえる良い機会になった」と大一番で真価を示した。

 想像もできないほどの苦難を自他ともに認めるポジティブ思考で乗り越えてきた。「いろいろありましたけど、結果オーライ」。愛用のリュックサックに付けたお守りには「とおやん がんばれ だいすき」との刺しゅう。日本勢初の表彰台までたどりついた34歳は、目を赤くして笑った。

 【宇田 秀生(うだ・ひでき)】

 ☆生まれとサイズ 1987年(昭62)4月6日生まれ、滋賀県信楽町(現甲賀市)出身の34歳。1メートル69、57キロ。

 ☆家族構成 妻・亜紀さんと2男。

 ☆元サッカー少年 小学校からサッカーを始め、滋賀・水口高では県選抜に選ばれたほどの実力を持つ。関西外大にはスポーツ特別枠で進学。

 ☆実績 リハビリの延長でトライアスロンを始め、15年のびわ湖トライアスロンでデビュー。同年のアジア選手権で優勝。世界選手権は17、18、19年と4位。

 ☆力の源 アスリートフードマイスターの資格を持つ妻の味噌汁。「レパートリーが凄く多くて、いつも味を変えてくれる」

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