ウクライナのテニス選手が戦闘態勢 フェデラーを破ったスタホフスキーが兵士として母国に戻る

2022年03月13日 09:16

テニス

ウクライナのテニス選手が戦闘態勢 フェデラーを破ったスタホフスキーが兵士として母国に戻る
2013年のウィンブルドン選手権でフェデラーを下したときのスタホフスキー(AP) Photo By AP
 今年1月に行われたテニスの全豪オープンに出場し、2013年のウィンブルドン選手権の2回戦では大会連覇を狙ったロジャー・フェデラー(スイス)を世界ランク116位の選手として破ったウクライナのセルジー・スタホフスキー(36)が、ラケットではなく銃を手にしてロシア軍と戦っている。
 同選手はウクライナのキエフ出身。2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻すると、妻と3人の子どもを避難先のハンガリーに残して同28日に祖母と父や兄弟がいるキエフに戻り、現在は6時間のオフをはさんで2時間ずつ“兵士”としての役割を担う日々を送っている。

 12日には米AP通信のリモート取材に応えて現在の心境を吐露。「自分の故郷でラケットではなく銃を手にするという人生は想像できなかった。母国に戻って最初の数日間は現実とは思えなかったがだんだん慣れてきた。国を助けるために道を探さなくてはいけない。多くの人が悪い夢であることを願っているが、きょうもうまくいかなかった」と侵攻から16日間が過ぎた時点での状況を説明した。

 スタホフスキーは12歳から本格的にテニスを初め、17歳でプロに転向。2013年のウィンブルドン選手権では優勝候補のフェデラーを3―1で下し、同選手の四大大会でのベスト8連続進出記録を「36大会」で阻止した。ATPツアーのシングルスでは4回優勝し、最高ランクは2010年の31位。生涯獲得賞金は500万ドル(約5億9000万円)以上だったが今年の全豪オープンでは予選の1回戦で敗れて引退を表明し、その後、ウクライナのために予備役に登録していた。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は12日、首都キエフでの会見でロシアによる侵攻ですでに約1300人のウクライナ兵が死亡したと発言。「今、安全であっても次の瞬間には何かが飛来して誰も安全ではなくなっている。願わくば戦闘が長引かず早期に解決してほしい」と語ったスタホフスキーにもその危機が迫っている。

 スタホフスキーはハンガリーにいる妻や3人の子ども(8歳の長女と6歳と4歳の長男と次男)についても言及。ハンガリーを離れた理由については教えておらず「連絡を取るのはつらいんだ。子どもたちと話をすると決まって“いつ戻ってくるの?”“何をしているの?”と聞かれてしまうから…。ウクライナに戻ることを伝えたときに妻は泣いていた。家族のことを思えば自分にとっては正しい決断ではないのかもしれない。でも国の将来を思ってここ(キエフ)にいるんだ。それはひいては子どもたちや欧州の未来にもつながっている」とテニス選手から兵士となった心境を口にしていた。

 スタホフスキーはノバク・ジョコビッチ(セルビア)らを含め、多くの選手やコーチ、さらにテニス関係者から支援のメッセージが届いていることも公表。「状況を変えることができるならそれに向かって突き進むだけだ」ときょうも銃を手にとって戦いを続けている。

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