ロッテ“不思議な勝ち”の裏にある吉井マジックの真髄

2023年06月26日 08:00

野球

ロッテ“不思議な勝ち”の裏にある吉井マジックの真髄
24日の日本ハム戦でサヨナラ打を打った安田を迎える吉井監督(撮影・篠原 岳夫) Photo By スポニチ
 負けに不思議の負けなし、勝ちに不思議の勝ちあり――。南海、ヤクルト、阪神、楽天の監督を歴任した故野村克也さんの言葉だと思っていたが、実は江戸後期の肥前平戸藩主で剣術の達人でもあった松浦静山の剣術書「常静子剣談」の中にあった一文らしい。いずれにせよ、負ける時は必然的な要因があるが、勝つ時には、どうして勝ったのか分からない勝ちもあるということなのだろう。今年のロッテは“不思議な勝ち”が少なくない。故障者が続出し、チーム打率はリーグ3位、チーム防御率も同5位ながら、春先から長く首位を守り、現在も3強にとどまっている状況だからこそ、吉井マジックという言葉もよく使われている。
 ただ、マジックには必ずタネがある。平沢や池田ら2軍から昇格させた選手が即活躍したことについて、吉井監督は「調子が良いから昇格させたのに、すぐに使わなかったり、使わないまま抹消したり、もったいないなと思っていた」。日替わり打線に関しても「本当は固定するのが理想だけど、今はどうやったら、より多く点をとれるかを考えて組み合わせを変えている」と答えは明確だ。2度のブルペンデーで勝利を収め、先発投手2人を継投させるピギーバックも成功。そのあたりは日米7球団でプレーし、3球団で投手コーチを務めた経験から培った慧眼からくるものだろう。選手たちにとってはチャンスが巡ってくる機会が増え、自然とモチベーションは高くなる。多くの解説者も指摘する吉井監督の人心掌握術もタネの一つと言える。

 しかし、吉井マジックの真髄は目先の試合に勝つことではない。リーグ優勝という目標に向けて日々、次のタネが仕込まれている。例えば、24日の日本ハム戦。4―4で迎えた9回1死一、三塁。そこまで23打席ノーヒットで安田をそのまま打席に送り出した。代打起用という選択肢もあった場面。実際に前日23日の同戦では7回1死一、二塁から安田に代打を出していた。

 「きのう代打送って彼はかなり悔しい思いをしていたと思うので、どういう姿を見せてくれるかなと思って。ああいう、のっぴきならない状態で本能で打ったら何か変わるんじゃないかなという思いもありました」

 安田の成長に期待して送り出し、結果は左犠飛でサヨナラ勝ち。プロ6年目の安田にとってもチームにとっても1勝以上の価値のある勝利だった。日々、小さなマジックを積み重ね、秋には大マジックとして完結すると信じている。
(記者コラム・大内 辰祐)

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