もしもジョン・レノンが生きていたら
2024年07月21日 08:00
芸能
![もしもジョン・レノンが生きていたら](/entertainment/news/2024/07/21/jpeg/20240721s10041000092000p_view.webp)
音楽評論家の湯川れい子さんはイベントの中で「絶対に『戦争をするのは愚かなこと』と言うと思う。トランプ前米大統領はウクライナとロシアの戦争について『自分が当選すれば戦争を止めてみせる』と語ったが、戦争が終わるのだとしたらジョンは支援するかどうか…」と話した。なかなか興味深い想像だ。
「もしも」の答えを見つけるのは難しい。そもそも、全てが想像である限り、完全な正解など存在しない。しかし、自分自身を納得させる答えを見つけることはできる。アルバム「マインド・ゲームス」の表題曲にはその明快なヒントがある。
「マインド・ゲームス」が発売されたのは1973年。当時はまだベトナム戦争が続いていた。ジョンは69年、「平和を我等に」で♪だけど僕らに大切なのはこれなのさ…「平和を我等に」ただこれだけさ──と歌い、71年、「イマジン」で♪想像してごらん すべての人々が 平和な暮らしを送っていると──と歌った。
そして、「マインド・ゲームス」では♪戦うよりも、愛し合おうよ 聞き飽きているのはわかっているけど──と歌っている。ジョンはアルティメイト・コレクションの解説書に収められた談話の中でこの曲について「もともとは<メイク・ラブ・ノット・ウォー>というタイトルでね。でも、すっかり常套句と化して、もう口にできなくなったので、ぼかした書き方にしたんだけど、ストーリー自体は変わっていない」と話している。
もしも戦争が続くこの時代にジョンが生きていたら?彼の創作活動から、その答えは容易に想像できる。トランプ前米大統領を支持することはないにしても、反戦の思いと平和への願いを楽曲で表現しただろう。生きていれば83歳のジョンはともかく、「マインド・ゲームス」の時と同じ32歳のジョンならばそうしただろう。どんなメロディーを作り、そこにどんな言葉を乗せただろう…。
歴史に「もしも」はなく、それを聴くことはできない。しかし、今、最新のリマスターによって音が明確になった「マインド・ゲームス」はある。その歌を聴くと、1973年と2024年、我々が必要としている音楽はほとんど変わっていないと痛感する。
◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部専門委員。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。