山藤章二さん ジャンル問わずに幅広く活躍した才人だった

2024年10月12日 14:25

芸能

山藤章二さん ジャンル問わずに幅広く活躍した才人だった
山藤章二さんがイラストを描いた「私は栄ちゃんと呼ばれたい」 Photo By スポニチ
 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】イラストレーターの山藤章二さんが9月30日に老衰のため87歳で亡くなった。「週刊朝日」の時事漫画連載「山藤章二のブラック・アングル」は2021年12月まで45年続いた名物コラム。ジャンル問わずに幅広く活躍した才人さんだった。
 スポニチもずいぶんお世話になった。1974年に「軟派にっぽんの100人」を連載。作詞家で作家の阿久悠さんが97年に連載した小説「球心蔵 六甲おろしがこだまする」には絵を添えてくれたが、熱烈な阪神ファンだったから1枚1枚に気合いがこもっていた気がする。

 イラストを受け取りに東京・品川区のご自宅に何度か伺ったが、優しく迎えてくれた妻で随筆家の米子さんも昨年末に先立っている。喪失感がまだまだ消えない中で永遠の眠りについた。

 スポニチ本紙が文化や芸術に貢献した人物を表彰する「スポニチ文化芸術大賞」の優秀賞を受賞。選考委員も長く務めてくれた。阿久悠さん、演出家の久世光彦さん、岩波ホール総支配人の高野悦子さん、映画評論家の八森稔さん、映画監督の崔洋一さん、スポニチOBで音楽評論家の小西良太郎さん、そして山藤さんまで、多くの委員が鬼籍に入った。

 手元に1冊の本がある。「落語政談 私は栄ちゃんと呼ばれたい」(立風書房)で、著者は落語家の五代目柳家つばめだ。「吉田茂を偲ぶ」「佐藤栄作の正体」「ゲバラ日記」「古狐ド・ゴール」などなど、政治、社会など時局をとらえた創作落語を掲載したもので、今読んでも新しい。

 装幀・カットを担当したのが山藤さん。初版発行は1971年4月20日とある。山藤さんが「世相あぶり出し」などのイラストで風刺に本腰を入れ始めたころだ。

 落語にも造詣が深かった。99年、郵政省仕様による「平成十一年 笑門来福 落語切手」の原画を担当。五代目古今亭志ん生「火えん太鼓」、八代目桂文楽「船徳」、六代目三遊亭圓生「小言幸兵衛」、五代目柳家小さん「時そば」、三代目桂米朝「百年目」のイラストが80円切手となって発売された。

 映像がほとんど残っていない志ん生の噺を山藤さんがアニメーションで映像化した「山藤章二のラクゴニメ」(1~4、2000年)も忘れられない仕事。志ん生ファンにはたまらないDVDだ。

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