【蹴トピ】もう一度ウクライナの夢舞台で 主将MFステパネンコ 武力衝突でホーム離れて“流浪生活”

2024年02月14日 06:00

サッカー

【蹴トピ】もう一度ウクライナの夢舞台で 主将MFステパネンコ 武力衝突でホーム離れて“流浪生活”
シャフタル・ドネツクのステパネンコ Photo By スポニチ
 欧州リーグ決勝トーナメント進出プレーオフ第1戦が15日に行われ、ウクライナの強豪シャフタル・ドネツクがマルセイユ(フランス)と対戦する。激しい戦闘で本拠地を離れての活動を強いられ、故郷への思いを胸にピッチで戦い続ける同国代表MFタラス・ステパネンコ主将(34)にスポットを当てた。
 冬季中断期間明けの初戦がマルセイユとの大一番になるシャフタル。2戦合計の結果で16強による決勝トーナメント1回戦進出か、今季の欧州カップ戦敗退が決まる。8日まで行われたトルコ合宿で負傷が伝えられたステパネンコ主将。軽傷で試合に間に合うとの見通しもある中で動向に注目が集まっている。

 リーグ優勝14回の強豪に欠かせない。ドネツク州出身で10年から所属。最も在籍期間が長いチームの心臓は1月に契約を延長し、クラブがどういう存在か問われると「家族」と表現した。自らの役割を「最も経験豊富。若手を助け、チームがいい結果を残せるように適切なレベルを維持しなければ」と責任感をにじませる。

 荒廃する祖国で「もう一度、夢の舞台でプレーするのが目標」と語る。ドネツクには総工費4億ドル(約597億円)が投じられ、12年欧州選手権の会場になったドンバス・アリーナがあるが、シャフタルは14年からウクライナ東部で始まった親ロシア派武装勢力による武力衝突と実効支配を受け、ホームを使用できない状態が続く。

 「ロシアの占領下で補修や管理ができず、とても悪い状態。ネットで写真を見たりするけど状況はひどい。ロシア兵がいるから帰るのは不可能。さらに状況は悪化しているよ」

 ロシアの侵攻開始は2年前だが、シャフタルの流浪生活は10年前から。西部リビウ、東部ハリコフと拠点を移し、現在は首都キーウとリビウを併用する。国内開催の許可が出ない欧州カップ戦はドイツ・ハンブルクの競技場を利用するが“ホーム”ながらリビウからバスと飛行機を乗り継いで片道8~10時間と過酷な道のりになる。

 そんな苦境の中で今季の欧州チャンピオンズリーグでは1次リーグでバルセロナを破るなど奮闘。最終節まで突破を争ったが、H組3位で欧州リーグのプレーオフに回った。マルセイユに関し「激しいプレーで攻守の切り替えが早い。個が強い選手たちがいて興味深い試合になる」とステパネンコ。クラブに骨を埋める覚悟のベテランは決戦を見据えた。

 ◇タラス・ステパネンコ 1989年8月8日生まれ、ウクライナ・ドネツク州出身の34歳。メタルルフ・ザポロジエから2010年にシャフタル・ドネツク加入。公式戦出場はクラブ歴代5位の411試合で29得点25アシスト。シャフタルでの優勝はリーグ戦9回、ウクライナ杯とスーパー杯が各7回。10年からウクライナ代表でプレーして81試合4得点。1メートル81、76キロ。


 ≪「戦争が終わるまで世界中で発信」福岡戦でも現状訴え≫ シャフタル・ドネツクは昨年12月にルヴァン杯王者・福岡と慈善試合を行うために来日し、ステパネンコは復興支援を呼びかけた。

 来日前日にもクラブのボランティアが亡くなったことを打ち明け「身近な人が日々、命を落とす状況の感情をひと言では言い表せない」と告白。「戦争が終わるまで世界中でメッセージを発信し続ける。全力のプレーを見せることが現状打破につながる」と訴えた。

 侵攻を受けて21~22年シーズンの国内リーグは打ち切り。昨季再開されたが、試合は今季も含めて無観客で行われ、空襲警報で試合が中断されて防空壕(ごう)に避難したことも一度や二度ではないという。

 過酷な環境だが、苦労する点を問われても「不平不満はない」とステパネンコは話す。「同年代の多くの男性は祖国を守るため、寒い中で銃を手に戦っている。我々は移動手段も全て手配され、日本のような整った環境でプレーできる」。福岡戦は諦めない姿勢で2―2の引き分けに持ち込んだ。試合に加え、現状を言葉で伝えるための“戦い”も続く。

 ▽シャフタル・ドネツク 1936年にウクライナ東部のドネツクを本拠地に創設された。ソ連崩壊後の92年から始まった国内リーグの優勝は16回のディナモ・キーウに対して14回と2強を形成。2009年にはUEFA杯(現欧州リーグ)を制した。2連覇を狙う今季リーグ戦は消化が2試合少ない中、首位と勝ち点3差の4位で冬季中断に突入した。

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