性別変更女性 「父」と認知 最高裁初判断「子の福祉」を重要視

2024年06月22日 05:30

社会

性別変更女性 「父」と認知 最高裁初判断「子の福祉」を重要視
最高裁判決を受け、記者会見する仲岡しゅん弁護士(手前)ら=21日午後、大阪市 Photo By 共同
 性同一性障害特例法に基づき男性から性別変更した40代女性が、自身の凍結精子を使って女性パートナーとの間にもうけた次女(3)を認知できるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(尾島明裁判長)は21日、「血縁上の父の法的性別にかかわらず、婚外子は認知を求めることができる」とし、「父」として認知する初の判断を示した。認めなかった二審東京高裁判決を破棄した。トランスジェンダーの子の権利を保障する司法判断となった。
 裁判官4人全員一致の結論。第2小法廷は、認知がない場合には養育や扶養を受けられないほか、相続人になれないといった不利益が生じるとし「子の福祉や利益に反するのは明らかだ」と指摘した。「未成年の子がいない」ことを性別変更の要件とする特例法の規定にも言及し、規定は未成年の子への配慮に基づくもので「認知請求を妨げる根拠とはならない」とした。

 補足意見で検察官出身の三浦守裁判官は、次女のような子が生まれる可能性は特例法制定時から認識されていたとし「法整備の必要性が認識されながら20年以上が経過し、現実が先行している」と立法での解決を促した。裁判官出身の尾島裁判長は、性別変更した女性を未成年の子の父と認める場合に生じる影響について「家族秩序の混乱が生じるとの想定も具体的とは言い難い」とした。

 二審判決などによると、40代女性は性別適合手術を経て2018年に性別を男性から変更した。手術前に保存した凍結精子を使い、性別変更前に長女(5)を、変更後に次女をもうけた。

 40代女性は女児2人の認知届を出したが自治体に受理されなかったため、女児2人が40代女性を被告とする形で、認知を求める訴訟を21年に起こした。

 22年2月の一審東京家裁判決は2人とも認知できないとしたが、同8月の二審判決は性別変更前に生まれた長女に限って、父としての認知を認めた。次女については「出生時に性別が女性に変更されている」として認めなかった。

 長女は認知届が受理されている。性別変更の前後で法的な親子関係が分かれる形となり、次女側が上告していた。

 性別適合手術前に保存した凍結精子を使い、女性パートナーとの間に姉妹をもうけた40代女性は「親子関係が認められうれしい」とする喜びのコメントを発表した。

 次女側代理人の仲岡しゅん弁護士(大阪弁護士会)は大阪市内で別の弁護士と2人で記者会見し、最高裁判決について「常識的な判断」と評価。2022年8月の二審東京高裁判決は性別変更前に生まれた長女のみ認知できるとし、姉妹で判断が分かれていた。

 望みをつないだ最高裁判決で、次女との親子関係がようやく認められ、姉妹を出産したパートナー女性も「(性的マイノリティーの)当事者や子の権利が認められた」とのコメントを寄せた。

 仲岡弁護士は、性別変更前に自身の精子を保存していた女性と次女の双方が親子関係を求めていたとし、訴訟を通じて「司法や行政が親子を分断するのかと問いかけたかった」と述べた。

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