小池百合子氏はなぜ圧勝したのか?“もろ刃の剣”自民のステルス戦に乗り組織票を獲得
2024年07月08日 05:28
社会
“8時当確”とはいえ「旋風」と評されたかつての勢いは感じられない選挙だった。実態はライバルをなぎ倒すというより、告示前からの優勢をキープした逃げ切り。「逃げるが勝ち」に徹した戦い方だった。
学歴詐称疑惑を指摘してきた元側近から告示2日前に公選法違反の疑いで刑事告発され、ヤジによるイメージダウンを避けるためか街頭演説は少なめ。17日間の選挙期間中、23回行った蓮舫氏に対し12回。同じ土俵には上がらない横綱相撲を演出した。
蓮舫氏から激しく責め立てられたのは、候補者討論会の回避。小池氏陣営は「断った事実はない」と否定したが、「どうして表に出て堂々と議論してくれないのか」と批判され続けた。伝えられている討論会NGの理由は、泣く子も黙る「公務」。参加したのは、告示4日後に行われたもののみ。対照的にこの日はNHKの開票速報番組に続き、フジテレビの生中継番組もはしご。自らの政策について得意げに語り、笑顔を振りまいた。
不利になり得る場面を排除した選挙戦で頼りにしたのは、初当選した16年の選挙で攻撃対象とした自民党。派閥の裏金事件を受けて猛烈な批判にさらされている同党の表だった支援は避けたいが、組織票は回してほしい――。自民党のステルス戦に乗った。各種団体を動かし、都内で100万とも言われる組織票。都連関係者は「7、8割は回せたのではないか」と話した。
実際、自民党の裏金問題をどの程度重視したかを聞く出口調査では「大いに重視した」と「ある程度重視した」が計70%に達したが、そのうち34%が自民党の支援を受けた小池氏に投票。石丸氏、蓮舫氏を上回った。ステルス戦が実った形だ。
(影響力低下?/) 小池氏は当確後、自民や公明党などを念頭に今後の政党との関係について問われたが「都民の推薦を受けて戦ってきた。保守の皆さまや、働く方々の代表として連合(東京)の皆さまからも力強い支援を賜った」とはぐらかし「都民が暮らしやすく、子供を育てやすい東京を目指してバージョンアップしていく」と3期目の抱負を語った。
今後の各党運営にも影響を与えそうだ。小池氏が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」と自民党が直接対決する都議選を来夏に控え、大きな借りをつくったとも言える。逃げに徹したツケが付いて回り、相対的に影響力が低下する3期目となる恐れも。16年の出馬表明会見で「ブラックボックス」と呼んだ都連に牛耳られる女帝となり果てるのか、厳しい目が注がれる。