飛び込み・寺内健 6度目大舞台へ13歳の“怪物”が刺激に――41歳新境地、演目の変更視野
2020年07月21日 06:25
飛び込み
「ステイホーム期間は美容院に行けなかった。2カ月で1回しか切れなくて、伸びっぱなし。髪が硬くて多いので、スーパーハードジェルでも整わない。気に入らなくてイライラしていたので写真も撮らなかったですね。今は鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように5日に1回ぐらい髪を切りに行ってます」
コロナ禍により、3月19日から2カ月以上もプールに入れなかった。その間は1日1時間程度、週3~4回のペースで自宅で筋トレを行った。最低限のトレーニングしかできなかった外出自粛期間中に体重は2キロ増加。5月26日にプールで練習を再開後は基本動作の確認を繰り返し、約1カ月をかけてベスト体重の69キロに戻した。
「通常の練習を再開してから最初の3~4日は筋肉痛がひどかった。2カ月間運動量が少なかったことを物語りましたが、練習ができる喜びを感じられるうれしい痛みでしたね。今は自分のベースを取り戻すことが第一。(昨年2月にじん帯を損傷した)右肩は2カ月使わなかったので、完治とはいかないが、かなり良くなった。痛みが引いてきたのはプラスです」
板飛び込みと、坂井丞(27=ミキハウス)と組むシンクロ板飛び込みで東京五輪出場が内定。世界の強豪と比べ演目の難しさを表す難易率は高くないが、技の美しさで勝負してきた。当初は五輪本番でも演目を変えずに精度を追求する方針だったが、大会の1年延期を受けて難易率の上がる演目変更を視野に入れた。きっかけの一つには、一緒に練習する13歳の存在があった。
「一緒に練習している玉井陸斗というモンスターのような後輩が最近も新しい技に挑戦している。それを見て刺激をもらっているし、学ぶことも多い。今は五輪でメダルを獲るためには演目の構成を変える必要があると感じている。陸斗とは良い距離感で良い関係を築けています」
8月に不惑を迎え、東京五輪期間中には41歳になる。大ベテランにとって1年延期は長く重い期間だが、悲観はしていない。
「去年一年はもう少し体を軽くした方が楽かな、とか、もう少し重くした方が板をしっかり踏めるかな、とか試行錯誤していた。本来なら、ばたばたと試合と練習を重ねて本番を迎えていたが、延期により、もう一度自分の体を見直すチャンスができたと感じている。肉体的なマイナスはあるかもしれないが、できることが増えることに焦点を当てたい。41歳を厳しいと感じるぐらいなら、40歳に向けた挑戦もしていない」
親交の深い、競泳男子で五輪2大会連続2冠の北島康介氏(37)からは冗談交じりでエールを送られている。
「康介からは“41歳でしょ。きついね。こんなに頑張っているおじさんがいることをもっと知ってもらいたいね”と冗談ぽく言われました。同世代のアスリートがどんどん引退する中、オッチャンの星として頑張りたい」
新型コロナウイルスに収束の気配はなく、五輪開催に対する世論の厳しい意見もある。寺内は人命最優先を強調した上で、1年後の青写真を口にした。
「五輪は世界が平和であることが大前提として開かれる祭典。外出自粛期間はスポーツ選手の価値とは何なのかと考えさせられました。世界がある程度落ち着いた暁として五輪が開催されるのが理想。コロナの収束を実感できる大会として世界の方々に盛り上がっていただければいいと強く思います。個人の目標はメダル獲得。過去5大会で見られなかった光景を見てみたい」
▽飛び込み 五輪種目には高さ3メートルの弾力性のある板を使用する板飛び込みと、10メートルの台から飛ぶ高飛び込みがあり、それぞれ個人と2人1組で飛び込むシンクロがある。採点競技で、男子は6回、女子は5回の試技の得点の合計を競う。前後の回転やひねりを組み合わせた空中姿勢の美しさと入水時の水しぶきを抑えることがポイント。シンクロは2人の同調性も見る。採点は0~10(0.5刻み)。上位2つと下位2つを除く採点を合計し、演目の難易率を掛けた値が得点になる。
▽飛び込み五輪内定者 19年7月の世界選手権、同9月のアジア杯で内定条件をクリアした男子板飛び込みの寺内、男子シンクロ板飛び込みの寺内・坂井ペア、女子板飛び込みの三上、女子高飛び込みの荒井の出場が決まっている。五輪最終予選を兼ねるW杯東京大会が今年4月から来年2月に延期となり、今年2月の選考会を勝ち抜いた13歳の玉井らが出場予定。個人種目は準決勝進出ラインの18位以内で五輪出場が決まる。シンクロ種目は開催国枠が1枠あり、著しく競技力が劣らなければW杯出場ペアが五輪代表になる。
▽難易率 技の難しさの度合いを示す数値。回転数、ひねり数、形などの組み合わせにより演目ごとに決められている。上位2つと下位2つを除く採点を合計し、難易率を掛けた値が得点になる。
◆寺内 健(てらうち・けん)1980年(昭55)8月7日生まれ、兵庫県宝塚市出身の39歳。生後7カ月で水泳を始め、小学5年時に飛び込みに転向した。此花学院高、甲子園大、甲子園大大学院を経て、ミキハウスに所属。08年北京五輪後に一時引退し、会社員として水着の販売や企画を担当した。10年に現役復帰。飛び込み台への階段は必ず左足から上る、試合中に使うタオルの畳み方は演目により二つ折り、三つ折りに分ける、大会前は部屋を徹底的に掃除するなど、数々の験担ぎがある。16年リオデジャネイロなど5度の五輪に出場。1メートル70、69キロ。血液型A。
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