日本ラグビー協会・土田会長が語る…W杯再招致、15人制女子強化、平尾さんへの思い
2022年10月26日 04:20
ラグビー
「現地へ行って、1試合だけ見てきた。出場するだけではなくて勝つことも目標にしていたが、残念ながら勝てなかった。現状は昔の男子の日本代表と同じだと思う。米国、カナダとは体力差があって、相手はスクラムを押して、ラインアウトを取って、モールで押してというラグビー。ある意味で単純なラグビーだが、そこが世界の4位や5位に入ってくるなら、日本にはまだまだチャンスがある。男子が20年、30年掛かったことが、4、5年で詰められるチャンス。ただ競技人口の問題もあるし、女子は15人制の国内大会がほぼない。テストマッチは南アフリカやアイルランドを呼ぶことができているが、国内の試合がないと、女子15人制の強化が進まない。一方で女子のクラブチームが増えているので、そこにチャンスがあると思う」
――ニュージーランドではワールドラグビー(WR)のビル・ボーモント会長ともコミュニケーションを図った。W杯再招致などで進展は。
「新しく会長になったこと、日本大会の成功を応援してくれたので、1時間くらい会長やCEOと話す機会があったので、本当に良かった。彼らが言ってきたのは、19年大会の成功は、ワールドラグビーの歴史を変えたということ。スタジアムも今までは新たなスタジアム、3万人以上入らないとW杯はできないと言ってきたが、そうではないと。SDGsのことを考えても、今ある会場でやるべきだということも言ってきた。また今までは何億円くれというコミットだった。それをWRと開催国で痛み分けにするという。このくらいの額がないと開催できない、というわけではない。ある意味、選ぶ時も、今まではプレゼンテーションをしていたが、選び方も変えると言っていた。あとは女子はまだまだ観客が増えていない。男子は31年で米国なら、33年は女子もやって、トータルで利益を出していく。だから次は35年と37年(をセットで)。言われたことは、アジアのラグビーの先頭に立って走ってほしいと言われた」
――男女7人制日本代表もメダル獲得を目標に掲げる五輪まで、あと2年しかない。
「最大の課題だ。まず、男子は(トップカテゴリーの)国内の大会がゼロ。見る場がない。国際大会だけでなく、国内大会もつくらないと、選手が集まらない。リーグワンのチームに、リーグセブンズをやってくれとお願いしている。今までは東京五輪に出たいという選手がいたが、それが終わった瞬間、何も目的がなくなったのが男子7人制の問題。女子は国内大会(太陽生命シリーズ)があり、力もついている」
――今月20日に平尾誠二さんの七回忌を終えた。改めて盟友への思いは。
「私が会長ではなくて、平尾がやるべきだったし、15年に理事になった時も、そういう約束で(協会に)入ったわけで、まさかこうなるとは思わなかった。仕事をするデスクの上には、彼とのツーショット写真を置き、(悩み事があれば)“彼ならどう考えるかな”と思って判断している」
――平尾さんとの関係の始まりは。
「高校代表の菅平の夏合宿で会った。彼はシャイで、口数が多くなく、たまたま主将と副将で関係ができた。それで秋の2回目の合宿で進学について相談した。当時はネットもニュースもない時代。テレビは一応カラーでしたけど(笑い)。入学前も平尾家に10日間くらい泊まって、大学の試験を受けに行った。大学は彼が主将で私がバイスで、いろんなことがあった。卒業してからも主将同士だった。彼が神戸製鋼で日本選手権を7連覇して、急に僕がサントリーの監督になった。平尾が引退して日本代表の監督になった時に“一生のお願いだ。コーチをやってくれ”と言ってきた。節目節目でずっと一緒にやってきた。それはたまたまなのか、何なのか。そういう意味では53歳で亡くなって、私自身は相談するやつがいなくなって、さみしい思いはしている。何かあれば相談する相手だった。17歳から知っているからね」
◇土田 雅人(つちだ・まさと)1962年(昭37)10月21日生まれ、秋田県出身の60歳。秋田工から進学した同大ではNo.8として故平尾誠二さんと大学選手権3連覇に貢献。85年にサントリー(現リーグワン東京SG)に入団し、日本代表では85年10月のフランス戦で初キャップ。95年の現役引退後はサントリー監督として95、00、01年度に日本選手権優勝に導いた。15年から日本協会理事、22年6月から現職。
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