沙羅「五輪の借りは五輪で返したい」引退検討も「続けることで償っていかないと」
2022年11月03日 04:36
ジャンプ
あの失格直後、自身のインスタグラムに「今後の私の競技に関しては考える必要があります」と記した。五輪後のW杯も完走したが、その時点でも気持ちは去就に揺れていた。
「五輪でやってはいけないことをやってしまい、やめることで償えるならそうしたかったが、長い期間考える中で、そうではないと思った。続けることで償っていかないといけないと思った」
春先も「体が動かなくなると気持ちも前向きになれずに落ち込んでしまう」と、トレーニングは継続。並行して多くの人に会い、励ましや助言をもらう中で、徐々に気持ちが前向きになったという。
「最終的には6月の蔵王合宿の時に続けようと決めた。練習で純粋にジャンプの楽しさというのを感じられたし、見ている人も楽しんでいるのが、自分にとっても幸せなことと感じることができた」
悪夢のような、時間にしてたった数十秒の失格に至る出来事は、今でも「ふと思い出すことがある」と語る。
「口頭で失格を伝えられて再審をお願いしたが、拒否された。本来は拒否してはいけないルール。測り方も明らかにいつもと違う。コーチを呼びたいと言ってもノーと言われた。何を言ってもノー。らちが明かなかった」
先月には今季海外初戦でも再びスーツ規定違反で失格。五輪の経験を踏まえ、大会にはスーツ技術者を帯同し、当日朝も身体測定。自信を持って本番を迎えただけに「あり得ないこと」と話すと同時に、競技発展や魅力向上のために提言する。
「数時間で手や膝が縮むことはない。やはり測り方にコントローラー(測定員)とスーツ技術者の意識の差があってはいけない。ルールをもっと明確にする必要があると思う」
次の五輪へ、新たなジャンプスタイルをつくっていく最初のシーズン。2、3月をまたぐ時期には世界選手権(スロベニア・プラニツァ)を控えるが、高梨の目標は明確だ。
「今のところ、成績よりも自分のジャンプをつくることが大きな目標。成績は内容の後に付いてくるものなので。今は土台を固めることに集中したい」
男女通じてジャンプW杯歴代最多の63勝、表彰台113回を誇る高梨。技術を磨き、メンタルを整え、今後もシーズンごとに変わる道具のルールに対応しながら、目指すべき頂点はあくまで26年だ。
「どうしても4年スパンになってしまうが、五輪の借りは五輪で返したいと思う」
今後も試練や困難が待ち受けるだろう。それでもそう語る高梨は、迷いのない目力をたぎらせた。
《女子個人計27戦の予定 最長シーズンに》今季のW杯はビスワでの開幕戦を皮切りに、女子個人は計27戦が予定されている。開幕戦が11月初旬に設定されるのは異例で、来年3月末まで過去最も長期のシーズンとされている。来年1月には札幌で2戦、蔵王で2戦の計4戦が予定されており、3季ぶりの国内開催が実現する見通し。世界選手権や女子初のフライングヒルも控えており、五輪明けながら例年以上に楽しみの多いシーズンになりそうだ。
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