平野歩夢 1カ月間の「二刀流」挑戦 見据える針路 行く先はパリかミラノか、新世界か

2023年01月28日 09:00

スノーボード

平野歩夢 1カ月間の「二刀流」挑戦 見据える針路 行く先はパリかミラノか、新世界か
平野歩夢 Photo By スポニチ
 言葉は乱用することで重みを失う。スポーツ報道における「二刀流」はその典型だろう。江戸時代初期の剣豪・宮本武蔵の右手に大太刀、左手に小太刀を持つ剣術が語源とされ、転じてスポーツ界では同時に2つのことを行うことを表す。最高峰の舞台で投手と打者と両立する大谷翔平にはぴったりの言葉だが、何か2つのことをするアスリートを、誰でも彼でも二刀流と表現してしまうのはいかがなものか。
 平野歩夢も一般的に「二刀流」で知られるアスリートだ。スノーボードで冬季五輪に3度、そしてスケートボードで一昨年夏の東京五輪に出場した。東京大会が1年延期となったことで、わずか半年の準備期間で臨んだ北京五輪だったが、悲願の金メダルを獲得。まだまだ記憶に新しい大偉業だが、例えるならば、2つの異なる太刀に持ち替えて達成した偉業だった。私自身は努めて「二刀流」と表現しないようにしてきた。

 だからこそ、これから彼が挑もうとしていることは、正々堂々と「二刀流」と表現したい。日本時間のきょう1月28日に行われるアクションスポーツの祭典「Xゲーム」(米コロラド州アスペン)にスノーボーダーとして出場する平野歩は、2月5~12日はUAEのシャルジャで開催されるスケートボードの世界選手権に挑む。そして再び板を履き替え、招待大会のデューツアー(2月24~26日、米コロラド州カッパーマウンテン)にもエントリー。わずか1カ月の間に、2つの種目の3つのビッグイベントに臨む。

 いわゆる課程を他人に見せないタイプの平野歩が、この数カ月間、どのような準備をしてきたかはうかがい知れない。それを含めて結果で示そうということだろうが、未開の地を行く挑戦を続けてきた金メダリストにとって、競技生活を続ける新たなモチベーションが、この濃密な1カ月間につまっているのは間違いないだろう。

 昨年11月、地元の新潟県村上市で行われたスケボーの日本選手権に出場した際、パリ五輪への意欲を問われて「五輪は考えすぎないように。そういう思いが強い」と語っていた。一方、さらに突っ込んだ質問に対しては、「あまり強い思いはないが、思いが強くなる可能性はあるので」とも言った。自分自身が、心の揺らめきを俯瞰しているような、その行き先を楽しみにしているような、そんな受け答えだった。

 1カ月間の二刀流挑戦で、どんなパフォーマンスや結果を出し、その後の針路を定めるのか。行く先はパリかミラノか、はたまた凡人には想像も付かない新世界か。まずは執念のトリプルコーク1440で金メダルをもぎ取って以来となる、雪上でのパフォーマンスを見守りたい。(記者コラム・阿部 令)

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