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【パリ振り返り】女子ボクシングの性別騒動、今後も五輪のたびに各競技で問題化の可能性

2024年08月11日 22:30

五輪

【パリ振り返り】女子ボクシングの性別騒動、今後も五輪のたびに各競技で問題化の可能性
金メダルにキスをするイマネ・ヘリフ(AP) Photo By AP
 パリ五輪は11日(日本時間12日)、全日程を終えて閉幕する。100年ぶりにフランス・パリでの開催となった夏季五輪。26日(同27日)にセーヌ川での開会式で開幕し、17日間の熱戦が繰り広げられた。
 ボクシング女子の性別騒動は、「多様性」の重視が社会の調和ではなく、むしろ分断を生み出している現実を浮き彫りにした。

 発端となったのは、66キロ級のイマネ・ヘリフ(アルジェリア)の初戦の相手が開始46秒で棄権し、昨年の世界選手権における性別適格検査で不合格とされたヘリフが男性であるかのような反応を見せたこと。同じく世界選手権で不合格となった57キロ級のリン・ユーチン(台湾)とともに、今大会の出場を疑問視する批判が巻き起こった。相手陣営が試合後、今後の対戦拒否ともとられる態度を示す試合が続き、SNS上では誹謗(ひぼう)中傷や、「元男」「トランスジェンダー」など誤った噂も拡散された。ヘリフは自身の競技終了後、「オンラインハラスメントを受けたとして、不特定多数を相手にパリ検察に告訴状を提出した。

 騒動の根源には、世界選手権を主催する国際ボクシング協会(IBA)ではなく、国際オリンピック委員会(IOC)が五輪のボクシング競技を運営している事実がある。IOCは組織運営や財務、倫理面に問題があるとしてIBAに資格停止処分を科しており、21年東京大会から五輪の競技運営を統括。ヘリフとリンについては「パスポートに女性と記載されている」と女子部門への出場を認め、IBAとは異なる見解を示した。IBAは出場を許可したIOCを批判し、IOCもバッハ会長が「2人が女性であることに疑いの余地はない」と断言するなど、両者の対立はさらに深まっている。ちなみに昨年の世界選手権はIBAがロシアとベラルーシの参加を認めたため、米国や英国などは大会をボイコット。2人の不合格は大きな話題にならなかった。

 IBAは世界選手権で2人を不合格とした理由について、検査でテストステロンの数値が男性並みに高かったと説明した。だが、過去には普通に国際大会や五輪に出場していた2人の検査についての詳細は明かしておらず、性別検査の規定や大会中に2人の決勝進出取り消しやメダル剥奪を決定したプロセスも不明瞭だ。IOCは検査自体が恣意的で、信頼性に疑いがあるとしている。もっとも、五輪の参加資格に関しては、IBAが統括していた16年リオデジャネイロ大会から更新されておらず、そこに性別検査は含まれていない。

 2人はそろって金メダルを獲得したが、パワーやそれこそ「男性並みのパンチ力」などではなく、ジャブやコンビネーションなど高い技術が目立った。東京五輪女子フェザー級で金メダルを獲得した入江聖奈さんも、大会前にライバル視していたリンについて「長身で試合運びがうまい」と強みを話していた。性別は何を基準に判断するのか、「多様性」が求められる中でトランスジェンダー選手の大会参加はどうするのか。既に各競技で起きている性別問題は明確な答えが見出しにくく、今後も五輪開催ごとに騒動に発展する可能性がある。

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