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スポキャリ インタビュー vol.6坂根耕世さん (京都先端科学大学 硬式野球部 チーフディレクター/京都先端科学大学 スポーツ振興室 マネジメントスタッフ)

2021年01月18日 12:00

スポーツ

スポキャリ インタビュー vol.6坂根耕世さん (京都先端科学大学 硬式野球部 チーフディレクター/京都先端科学大学 スポーツ振興室 マネジメントスタッフ)
京都先端科学大学硬式野球部 チーフディレクターの坂根耕世さん(右)と岡泰秀スポキャリ取締役会長
学生のこと、就活のこと――
大学の指導者に聞いてみた

坂根耕世さん(京都先端科学大学 硬式野球部 チーフディレクター/京都先端科学大学 スポーツ振興室 マネジメントスタッフ)

[聞き手]岡泰秀 (株)スポキャリ取締役会長。昭和50年(1975年)生まれ。京都成章高-大阪体育大。99年4月(株)大阪近鉄バファローズに入社。監督付き広報、2軍チームマネジャーほか、球団社長室に所属し、肖像権委員会、広報業務などに携わる。近鉄球団の整理を担当しながら、オリックスバファローズや東北楽天イーグルスの設立に携わり退社。09年にスポーツマネジメント会社「スポーツカンパニー」設立。上原浩治(元巨人)、建山義紀(元日本ハム)らの日本側の代理人を務め、清水直行(元ロッテ)らの事業コンサルを務めた。04年よりプロスポーツ昭和50年会を立ち上げ、幹事長を務める。05年より大阪体育大学硬式野球部の助監督を務めた(~17年)。16年からは阪神大学野球連盟の常任理事。20年より(株)スポキャリ取締役会長

◆新しい世界に飛び込む前に自分でしっかりと考えよう
京滋大学野球連盟の1部リーグで歴代2位の優勝回数を誇る京都先端科学大学。一昨年まで硬式野球部の監督を務めていた坂根耕世氏は、2020年に校名が京都学園大から変更したタイミングで創設されたスポーツ振興室のマネジメントスタッフとして、野球部のみならず同大学が強化指定クラブと指定した4クラブ(野球、サッカー、女子バスケット、パワーリフティング)の運営、強化に取り組む一方、学生の生活、進路に関する問題に携わっている。そこでは、入学から卒業・就職まで、学生のために親身になって面倒を見ることがテーマにもなっており、坂根氏も監督時代とはまた違った”指導”を施している。この1年、新型コロナ禍で思い通りの活動ができなかったという坂根氏だが、ディレクターとして学生に向き合う姿勢や現状を語っていただいた。

◆監督から立場が変わって、考えたこと
京都学園大から京都先端科学大に名称が変わったのが、2019年。そのタイミングに合わせて坂根さんの立場も大きく変わった。硬式野球部では監督を退き、元プロ野球選手の中島輝士氏を招へいし、坂根さんはチーフディレクターとなった。また、硬式野球部、サッカー部、女子バスケットボール部、パワーリフティング部の4部を同大の強化指定クラブとして認定し、つかさどるスポーツ振興室を創設、坂根さんもマネジメントスタッフとして、活動している。そこでは学生たちの「入学から、キャリアの“出口”まで。在学中の学業のことはもちろんのこと、全般的に強化指定クラブを育成していくということがメインのプログラムになっている」と坂根さん。担当して1年余り。コロナ禍にあって思ったようにできなかったことも多かったという。「体育会の本当の強さというのが、どうなのかという問題もあった。そういうところに自信をもって、企業側に対してもちゃんと話をできるような人材を今後、大学の中にも作っていかないといけないと思ってはいます。まだ動き始めたばかりで、コロナ禍の中、やるべきことができたとも思っていませんが。まだまだ1年余りでは、何とも言えないのが正直なところ。学生が入学して、卒業して、を経験してみないと、いろいろ見えてこないのかなという気持ちもあります」。オープニングスタッフとして、大学からも「お前が動かせ!」と強い言葉ももらっていたのだという。「だから、当初は指導者講習会とかやって、今度は、入学者を集めて”さあ、やるぞ”となったときに、コロナの問題が大きくなった。3年生にも伝えていて、キャリアのことも含めて計画は進めてきたんですけれど、全部吹っ飛んだ(苦笑)。2021年からちゃんと動きだせればいいと思っていますが、コロナの問題もまだまだ読めないところがありますからね」。京都先端科学大では、学生の就活に対して、独特の取り組みをしてきた。「うちの場合、大学自体、キャリアについて、実は強い。そのシステムを話すと、2年生、3年生になった際に、キャリアサポートセンターの担当者が学生一人一人の担当になります。もちろん、学生と同じ数の職員がいるわけではないので、一人の職員が複数の学生の担当となるのですが、個々に面談をしたり、それぞれの動きや希望を把握して、一人ひとり、マン・ツー・マンの形で、学生の不安解消、進路希望に応対してきた。そういうこともあって、就活については、実績を上げてきた」。これまで野球部の監督だった坂根さんにとっては、野球部だけを見ていた立場から体育会系クラブ全体をみていくほうに変わった。「僕自身が今まで、部員の就活に苦労したということはない。野球部としては、いろいろな方に来ていただいて、話をしてもらったりしていました。ただ“野球の就職”には苦労したところはあります。卒業後も野球を続けたいという学生の就職ですね。企業数の問題があって、実際に今企業の数が減っていますから」。坂根さんによると、卒業後も野球を続けたいと強く思っている部員は、ざっくり「半分弱くらい」ということだが、それにしても受け入れる側の企業減に、悩まされているようでもある。「この子だったら、”上(社会人野球など)“でできる」と思っても、実際に受け皿がないと、やりたくてもできないという悔しい思いをしたことも何度かあったというのだ。

◆人の話を聞くこと、そこにヒントはある
ただ、野球部に限らず、大学全体の就活に関して言うと、手ごたえを感じているのも事実だ。「もちろん、すべて希望通りの就職を実現させているということではありません。しかし今、大学自体の評価が右肩上がりになってきている。より、希望通りの就職を実現させていくことができるのではと、私自身期待しているところでもあります」。希望通りといっても、実際には学生の側にも、本当の意味での希望、なにをやりたいのかがはっきりしないまま、就活に臨み、内定をもらっていたという部分もある。「希望は口にしても、具体的な姿ではなく、イメージを持っているだけとか。なんとなく、名前はよく聞くし、いい企業っぽいという感覚で、”希望”を口にしているだけというところはあります。ただ、これは野球部や体育会のクラブの問題ではなく、多くの学生が最初はそういう感じなのではないでしょうか」。その意味でも、(株)スポキャリが開催しているような「セミナーの存在はありがたい」と、坂根さんはいった。「外部のセミナーにならって、うちの大学でも、強化指定クラブの学生を集めて、就職スタートアップの話をしてもらったけれど、まだまだ実感は乏しいという感じでした。しかし、これは僕自身もそうなんですけれど、いろいろな人と触れたり、企業の方と話をしていくうちにだんだん見えてくるようになる。それは学生たちもそう感じていると思います」。これは野球部の指導中にも感じていたことだというが、「人の話を聞け。どこにヒントが隠れているかわからない。この人のことはあまり好きではないからと、初めから聞く耳を持たないようでは、成長はない。技術的な話も、精神的な話でも、いろんな人からいろんな話を聞いて、そして考える。いろんな経験をすることで、スランプから抜ける術を身につけることもできるかもしれない、と。改めて思うと、それは野球だけではなく、就活、そしてこれから先の人生に関しても、同じことだなあと思いました」。

◆自分で考え、道を切り開く
お話を聞いているうちに、これまでの多くの指導者が口にされてきたことと同様のフレーズが飛び出した。「学生にとって、これまでの進路は、決して自分で作ってきた、切りひらいてきた道ではない。ほとんど周りが作ってくれた道の上を歩いてきただけ。それを今後は自分で考え、自分で道を作っていかなければならない。それを感じてほしい」。異口同音。指導者の方々が本当の意味で心配しているのは、“学生の自立”なのだ。「そこに気づいてもらえるよう、我々はヒントを提供する。そうであればいいんでしょうが、同じ言葉でも感じてくれる学生もいれば、そうでない学生もいて、時には、野球部での指導ではないですが、厳しく、強制力をもって対応しなくてはならないこともある」。セミナーに参加していただいている企業の方にも、甘い言葉をかけなくて結構。ダメなものはダメと厳しい姿勢で臨んでくださいと、お願いしたこともある。学生の側も、興味があることかどうかもわからないままセミナーに参加していることもある。だからこそ、終わった後、学生たちが「良かった」「ためになった」「就活、ちゃんとしないといけないという気持ちになりました」という感想を聞くと、主催者の立場としても、やってよかったと思うし、次のやりがいにもつながる。坂根さんは、「今の仕事は始まったばかり。まだまだ、僕自身が勉強して、変わっていかなければならないことを、自覚しています」という。そのうえで大事なことは。「学生たちとのコミュニケーションをもっともっと、とっていかないといけない。それを実践しているつもり。先日、野球部の学生に“(前)監督、なんか感じ変わりましたね”といわれたんですよ」。相手に合わせて目線を持っていけるようになって、もっと親身になって対応できるようになっていきたいのだそうだ。「優しさだけではなく、怒るというか、ダメなところはしっかりとしかる。今の指導者の中には、そこを“学生に任せているから”という方もいる。“学生の自主性”といえば聞こえがいいですが、それは見方によっては“放置”しているということです。大学生は“もう大人、でも子ども”だと思う。自主性は尊重しなくてはならいないですが、必要以上に甘やかすのもよくないと考えている」。厳しさを持ちつつも、親身になって、しっかりとコミュニケーションをとる。坂根さんの考えに大いにうなずいた。

◆就活のためのキーワード
1・イメージだけでなく実情を知ろうとしよう
2・人の話を聞くと解決のためのヒントが見つかる
3・叱るのは学生のことを思ってのことと感じるべし

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