常総学院"木内マジック" センバツ史上初タイブレーク勝ち イズム継承の島田監督、聖地初采配初白星

2021年03月25日 05:30

野球

常総学院
<敦賀気比・常総学院>ナインに指示を出す常総学院・島田監督(撮影・坂田 高浩) Photo By スポニチ
 【第93回選抜高校野球大会第5日第3試合 1回戦   常総学院9―5敦賀気比 ( 2021年3月24日    甲子園 )】 1回戦3試合が行われ、常総学院(茨城)は敦賀気比(福井)と対戦。センバツ史上初となるタイブレークに突入した延長13回に4点を勝ち越し、9―5で競り勝った。横浜(現DeNA)などで投手として活躍し、昨年7月に就任した島田直也監督(51)は甲子園初采配。昨年11月に亡くなった恩師の木内幸男元監督(享年89)に白星をささげた。
 天国の恩師も同じ考えだったはずだ。無死一、二塁から始まる延長13回のタイブレーク。島田監督は打席へ向かう先頭の秋本璃空(りく)に耳打ちした。

 「バントはない。バントの構えで様子を見てバスターしろ」

 初球、2球目とバントの構え。一塁手が猛チャージしてきた。そして3球目。バントの構えからバットを引いて、外角直球を強く叩いた。バントシフトの裏をかいた一打は右前へ転がり、二塁から三輪拓未が決勝のホームへ。「(打球が)抜けてくれて素直にうれしかった。気持ちで勝てました」。先発で7回3失点のエースは、そう言って笑った。

 タイブレークで表の攻撃。常識的な策は確実に走者を進める送りバントだ。でも、木内イズムを継承する島田監督は違った。大会前にタイブレークの練習をしていなかったこともあり「ここまで来たら打って勝とう」と強攻策に出た。それだけではない。ふがいない投球をした秋本に、バットで取り返させたことだ。「期待以上の結果を出してくれた」と褒めた秋本の一打から打線はつながり、決定的な4得点。選手の心を揺さぶって能力を引き出す。それこそ、木内野球の神髄だった。

 名将の木内氏は昨年11月に他界。島田監督は最後に会ったときの写真を忍ばせて戦っていた。8回にも4番・青木良弘に送りバントさせ、続く秋本がタイムリー。9回のサヨナラのピンチは申告敬遠で満塁策を取って切り抜けた。申告敬遠は春夏通じて甲子園初。甲子園初采配でも常識にとらわれなかった。

 「思う通りに、思い切ってやれ」――。昨年10月、末期の肺がんで声を出せない木内氏は教え子へのアドバイスを文書にした。その長い文面の最初の行に書かれた教えを、島田監督は実践した。「ミスが多かったのは怒られる。でも、チームで勝った試合には“よく頑張ったな”と言ってもらえると思う」

 延長13回、3時間15分の死闘。恩師へささぐ甲子園1勝は、確かに天国へ届けられた。(秋村 誠人)

 ≪18年から導入 過去夏3度≫高校野球のタイブレークは選手の健康面を考慮し、14年の地区大会で採用された。延長12回を終えて同点の場合、13回は無死走者一、二塁から攻撃を始め、打順は12回終了時の継続打順となる。全国大会では18年センバツから導入も18、19年の同大会では実現しなかった。夏の甲子園では18年の佐久長聖―旭川大高の1回戦で初めて実施され、5―4で佐久長聖が勝利。準決勝まで実施してきたが、今年からは決勝戦でも適用された。

 ≪センバツ史上最長、開幕から5日連続延長≫大会5日目は第2試合の柴田―京都国際、第3試合の常総学院―敦賀気比が延長戦となった。これで開幕日から開催5日連続で延長戦が行われたことになり、62年の開幕日から開催4日連続を抜きセンバツ史上最長となった。

 ▽申告敬遠 試合時間短縮のために、投手が投球をせずに敬遠を申告できるルール。プロ野球では18年シーズンから採用された。高校野球では昨年から適用され、8月に甲子園で開催された交流試合で、山梨学院が白樺学園戦で申告敬遠を行った。

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