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【内田雅也の追球】崖っぷちに立たされた阪神 「あと2勝」のために、前を向くだけしかない

2024年10月13日 08:00

野球

【内田雅也の追球】崖っぷちに立たされた阪神 「あと2勝」のために、前を向くだけしかない
7回、2点適時二塁打となるオースティンの打球を見つめる阪神・岡田監督(左から4人目) Photo By スポニチ
 【セCSファーストシリーズ第1戦   阪神1ー3DeNA ( 2024年10月12日    甲子園 )】 敗戦後の阪神監督・岡田彰布は「今年を象徴するような試合だった」と言った。
 春先から顕著だった貧打も、DeNA主軸打者に浴びる痛打も、敗れる時のパターンだった。

 失点につながった3回表無死一塁の佐野恵太二塁打、7回表1死の牧秀悟二塁打、佐野三塁線突破安打はすべて初球だった。タイラー・オースティンの2点二塁打も2球目の第1ストライクである。「しかし、分からんかなあ。おんなじことやろ」。初球(または第1ストライク)の入り方を嘆いた。

 1、2番が8打数1安打と出塁できず、回の先頭が出たのは3点差がついた終盤の8、9回裏だけだった。「これでは何にもできへん」とサインを出す機会もなかった。

 風邪で体調が優れず、9、10日と練習を休み、自宅で静養していた。11日に復帰したが、この日の試合後まで、記者団を遠ざけていた。試合前にベンチで会っていたOB会長・川藤幸三や球団社長・粟井一夫によると、岡田は「息苦しい」と打ち明けていた。

 変なことを書くが、大いに嘆き、ぼやいた岡田の姿を眺めながら、ちょっとうれしくなった。体調が回復し、勝負にかける、いつもの岡田に戻っていたからだ。さあこれからである。

 もちろん、クライマックスシリーズ・ファーストステージは2勝先勝制の超短期決戦である。初戦を落とした阪神にはもう後がない。崖っぷちに立たされた。

 嘆き、ぼやいた岡田だが、こと総決算の時期に及んで「いまさら言っても仕方ない」ことは分かっている。あとは前を向くだけである。

 大リーグでは地区シリーズで1勝2敗と追い込まれたドジャースの大谷翔平が「あとはシンプルに2勝するということだけを考える」と語っていた。「今日終わったことは終わったことで、明日切り替えて頑張りたいと思います」。そして、この日、見事連勝で地区シリーズを突破している。

 今季限りでの退任が決まっている岡田にとっては、きょう13日の第2戦が最後の指揮となるかもしれない。総決算、集大成の試合にしたい。

 「少しでも長く、野球をやりたい」と岡田は語っていた。敗戦後の甲子園球場は美しい夕焼けに照らされていた。この景色をまだ見ていたいと願った。 =敬称略=
 (編集委員)

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