AI作品に否定的だった楳図かずおさん 漫画家の真価は「新しい物を生み出す姿勢と能力」
2024年11月06日 04:09
芸能
「わたしは真悟」でAIの普及した世界を描いた楳図さんが、AI漫画をどうみているか興味があった。答えは「手塚さんの作品を入力して良いところを抽出して作品を作るというけど、漫画ってそういうもんじゃない」と否定的。「これまで手塚さんが描いた作品と似たようなものはポコポコできるかもしれない」としたが、漫画家の真価を「新しい物を生み出す姿勢と能力」にあると強調。読者のニーズと時代を捉え、これまでにない“面白いもの”を作り出す力こそが必要不可欠で「それは過去の作品をいくら読み込んでも作れない」と語った。
思えば常に新しい物を提供し続けた人だった。ホラー漫画も徐々に人間の内面描写を深め、恐怖の質を変えていった。先を読む力もある人だった。「漂流教室」は核戦争後の未来が舞台にも見える。「わたしは真悟」はネット社会の怖さまで描かれているようだ。発表年を考えると、その先進性に驚く。
昨年6月の取材でも「量子物理学に最近ハマっている」と話していた。自衛官の発砲や政治家を巡る発砲事件が続いたことについて「似た出来事は連続する。量子力学によるもつれの一つかもしれない」と、こちらはイマイチ理解できなかったが、楳図さんの中では物語ができていたのかもしれない。そんな漫画が読めたかもしれないと思うと、残念でならない。 (文化社会部デスク・岩田 浩史)