誤審防止のはずが…未熟すぎる「ジュリー制度」権限に規定なし
2012年07月30日 08:10
五輪
ジュリー制度導入は、ビデオ判定を目的にされたものだ。先に掛けた選手の「技」が有効か、それを返した選手の「返し技」が有効かを判断するのが主目的だったが、徐々に権限が拡大し、最近は主審が判断した有効、技あり、一本が適切であるかの判断が多くなり、今五輪でも度々、主審の判定が覆っている。
ただ、関係者によれば旗判定のやり直しをジュリーが命じたのは初めてで、バルコス氏の話からすれば命じたのは「やり直し」でなく「判定の変更」だったという。これは、ジュリーはビデオを使って審判の判断の「補助」をしているのではなく、判断を「決定」していることを意味する。
そうすると、どうなるか。判定への疑問は審判ではなくジュリーに向けられ、試合審判は判断をジュリーに仰ぐ事態となる。混乱が拡大するのは目に見えており、関係者が「柔道の根幹の問題」と危ぐする理由だ。
以前より減ったとはいえ、未熟な審判がいまだに存在するのは事実だ。だが、せっかくのジュリー制度を運用する側も、制度の未熟さを改善していく必要がある。
▼00年シドニー五輪柔道100キロ超級「世紀の誤審」 日本の大黒柱・篠原信一(当時27)が決勝で宿敵のドイエ(フランス)と対戦。開始1分すぎに内股を透かして完全な一本を奪ったが、審判は逆に相手に有効を与えて、まさかの敗戦になった。山下泰裕男子監督らが猛抗議したが、裁定は覆らずに後味の悪い銀メダルとなってしまった。試合後にIJFのジム・コジマ審判理事(審判長)は「私も日本の言う通りだと思う。ただ、試合は3人の審判が裁くもの」と誤審を公式に認める発言をした。これをきっかけに柔道界でビデオ判定導入の議論が始まった。
▼スポーツジャーナリスト谷口源太郎氏(審判委員に)お伺いを立てて判定をひっくり返すというあり得ないことが起きた。長年の努力の集大成となる五輪の舞台で、こんな判定を下されてはたまらない。勝っても負けてもすっきりせず、選手には災難だ。